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「ライアン」小川泰弘、復活の陰に真中監督の助言――14年ぶりVへ、真のエースとなれるか【新・燕軍戦記#12】

前半戦の4位から巻き返し、混戦の続くセリーグで単独首位に立っている東京ヤクルトスワローズ。その要因の1つとして挙げられるのが、一昨年の最多勝投手で昨年、今年と開幕投手も務めた小川泰弘が、後半戦に入って6連勝と見事に復活したことだ。

2015/09/15

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「エースといわれる投手はテンポがいい」

 4勝6敗、防御率3.53(16試合)/6勝0敗、防御率2.09(7試合)
 これは今シーズン前半戦(球宴まで)と後半戦(9月2日まで)の小川泰弘(25歳)の成績である。比べてみれば一目瞭然。5月から6月にかけて4連敗を喫するなど苦しんだ前半戦から一転、後半戦は快調に白星を重ね、2001年以来のリーグ優勝を狙うヤクルトの先発投手陣をけん引している。
 
「このぐらいやってもらわないと困るっていうのが正直なところですけど、ここまで盛り返したのはさすがだなと思います。そういう意味ではいろいろ研究しながら大変なところはあったけど、よく頑張ってシーズン中に立て直してくれたなと思いますね」
 
 高津臣吾投手コーチも後半戦の小川をそう評価するが、いったいどこが良くなったのか? 小川とは同い年の『女房役』、捕手の中村悠平が言う。
 
「まずはテンポが良くなったことですね。交流戦の時に(千葉)ロッテの今江(敏晃)さんが『ライアン(小川の愛称)ってテンポ悪いよな。あれじゃ守りづらいよなぁ』って言ってたことがあったんですけど、ほかのチームの選手からそう見えるってことは、後ろで守ってる野手はもっと思ってるんじゃないかなって……。テンポを意識してからは余計なことを考えることもなくなりましたし、バッターもドンドン来られるほうが嫌だと思うんですよね」
 
 もっともそれまで体に染みついていた自身の投球テンポを、シーズンの途中で変えるというのは、容易なことではないし勇気もいるだろう。それでも、小川は「結果が出ていなかったので、思い切ってチャレンジした」という。そして、そのきっかけはオールスター期間中の真中満監督との対話にあった。
 
「(真中監督が)僕のピッチングを見ていて、まあ全体的にもテンポが悪かったんですけど、『ランナー一塁なのにピンチ(のような雰囲気)に見える』って言われてしまって……。『エースといわれるピッチャーはみんなテンポもいいし、クイックも上手だし、投げる以外の部分でもしっかりできる。小川もそういうところをやれるように』って言われて、しっかり取り組むようになりました」(小川)
 
 それまでは自分のペースで、ストライク先行で投げることだけを心がけていた。しかし、「監督に指摘されてからは『野手が守りやすいテンポ、攻撃に入りやすいテンポってどういうものなんだろう』って、自分なりに考えてやるようになりました」と話す。
 
 今はマウンドに向かう時から「テンポアップ」を自分に言い聞かせ、大学時代から続けてきたという、セットポジション前に右腕を高く上げて手をヒラヒラさせる仕草も封印した。
 
「もともと力を抜こうと思ってやってたんですけど、それが単なるルーティンみたいになってたんで、思い切ってやめました。意外と大丈夫でしたね。無駄な動作を省くことで、自分の中で考えすぎずに、シンプルにバッターと勝負できていると思います」(小川)

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