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大ブレイクの有望株が開幕マイナーでも選手組合は物申さず? 穏健路線に変化する世界最強の労働組合【豊浦彰太郎の Ball Game Biz】

この春に大ブレイクのブライアント三塁手(カブス)は、球団の思惑で開幕マイナーが濃厚だが、かつて世界最強の労組と恐れられたMLB選手組合は事態を静観している。時代とともにその対機構路線も変化しているようだ。

2015/03/29

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スプリングトレーニングで大ブレイク

 開幕まであとわずかのMLBで、1人の選手の動向が議論を呼んでいる。彼の名はクリス・ブライアント(カブス)。2013年のドラフト全体2位指名の23歳の三塁手で、昨季は2Aと3Aでマイナー最多の43本塁打を放っている。2015年のプロスペクト・ランキングでは、権威あるベースボール・アメリカ誌で全体1位に選ばれている。
 
 そのブライアントは、このスプリングトレーニングで規定打席未満ながら9本塁打を放ち全30球団でトップ。15打点は同1位タイ。OPSはなんと1.785(すべて現地時間3月26日終了時点)と、クレイジーなまでの大ブレイクを見せている。まさに2015年MLBの「春を制した男」だ。
 
「議論を呼んでいる」のは、彼がそれでも開幕をマイナーリーグで迎えることになりそうだからだ。カブスのセオ・エプスティーン球団社長は「もうちょっと三塁守備を磨いてもらう」とコメントしているが、それを信じる者はほとんどいない。本当の理由は、今季のメジャー在籍日数を調整し、将来FAとなるまでの年数を引き延ばしたいからだ。
 
 メジャーリーグでは、開幕から閉幕までの約半年間の内、172日以上メジャーで過ごせば「1年在籍」と計算される。したがって、彼が開幕メジャーとなれば最短で20年のオフに6年在籍となりFA権を取得するが、彼を開幕後はしばらくマイナーリーグに止め、今季の在籍日数を172日未満とすれば、カブスは21年まで拘束できる。
 
 在籍日数は年俸調停権の取得時期にも影響する。通常であれば、調停の申請権を得るのは3年目終了時だが、2年目が終わった時点で在籍日数が2年以上3年未満の上位22%に入ると、「スーパー2」として1年早くその権利を得る。調停権がないうちは、それこそMVP級の活躍を見せても球団はメジャー最低保障年俸(今季は50万7500ドル)で拘束できるが、権利を得れば1000万ドル級に跳ね上がる可能性もある。
 
 有望な若手選手が上記の球団事情のため昇格時期を5~6月に遅らせられるのは珍しいことではないが、今季のブライアントへの処遇が話題となっているのは、彼の活躍が特に傑出しているからだ。FOXの名物記者ケン・ローゼンタルなどは「選手組合は異議申し立てをすべきだ」と論じている。
 
 しかし、組合がそうする可能性は低いだろう。

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