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西武打線爆発。丸佳浩が王貞治以来の130四球を記録 セイバーメトリクスの視点で過去の打撃ベスト10を振り返ろう ~2018年編~

2021/01/14

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DELTA・道作

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 本企画はNPB過去年度の打撃ベスト10を眺め、往事の野球を今の視点から振り返り楽しんでもらおうというものだ。ただベスト10は従来の打率ではなく、セイバーメトリクスにおける総合打撃指標wRAA(※1)を採用する。これはリーグ平均レベルの打者が同じ打席をこなした場合に比べ、その打者がどれだけチームの得点を増やしたかを推定する指標だ。この視点で振り返ることで、実は過小評価されていた打者がわかるということもあるかもしれない。
 

 

2018年のパ・リーグ

チーム    試合 勝率 得点 失点 得失点
西武     143 .624 792 653  139
ソフトバンク 143 .577 685 579  106
日本ハム   143 .529 589 586  3
オリックス  143 .471 538 565  -27
ロッテ    143 .421 534 628  -94
楽天     143 .414 520 583  -63
 

 
 この年もパ・リーグは柳田悠岐(ソフトバンク)のシーズンとなった。本格化した山川穂高(西武)に対してもwRAAにして約10点の差をつけている。この年は打率.352で3年ぶりに首位打者を獲得。wRAAだけでなく、1打席あたりの得点貢献を表すwOBA(※3)、出塁率、長打率と得点の創出に関連が深い指標はすべて1位となっている。
 
 柳田はこれでこの4指標を4年続けて独占しているが、これはNPB史上で王貞治(11年連続)以外達成していない快挙である。3年連続でもほかには長嶋茂雄が記録しただけなので、柳田が歴史的に見ても傑出した打者であることがわかる。しかし柳田はこの4年間、打撃三冠では首位打者を2回獲得しただけに留まっている。もしかすると近年のNPBでは、打撃の表彰項目がプレーの実態的価値と合わなくなってきているのかもしれない。
 
 2位には山川穂高が47本で本塁打王を獲得してのランクイン。チームメイトの中村剛也と似たタイプのスタッツを残しており、球団に長打のスペシャリストを輩出する文化が根付いているようにも感じられる。
 
 3-5位には高い出塁率と長打力を併せ持つ秋山翔吾(西武)、吉田正尚(オリックス)、浅村栄斗(西武)がランクイン。秋山は39二塁打がリーグ最多。初のトップ10入りとなった吉田正尚(オリックス)も37二塁打を記録している。
 
 6位と8位には日本ハム勢の近藤健介、西川遥輝が出塁のスペシャリストらしい個性的な活躍。西川は44盗塁で3度目の盗塁王を獲得したが失敗はわずかに3。200盗塁を達成したこのシーズン終了時点で成功率は驚異の.873となっている。3年ぶりに9位にランクインした森友哉(西武)は打撃でも利得をもたらす新時代の捕手像を提起した。
 
 ベスト10圏外の注目選手に挙げたのは源田壮亮(西武)。wRAAは-3.1と打撃指標はマイナスながら、守備指標UZR(※5)で、前年から2年続けて全ポジション中最大の利得を計上した。この年は平均的な遊撃手に比べ守備で30点以上多くの失点を防いだという評価になっている。そしてこの全ポジション中1位の記録は2019年まで継続することになる。
 

2018年のセ・リーグ

チーム  試合 勝率 得点 失点 得失点
広島   143 .582 721 651  70
ヤクルト 143 .532 658 665  -7
読売   143 .486 625 575  50
DeNA   143 .475 572 642  -70
中日   143 .447 598 654  -56
阪神   143 .440 577 628  -51
 

 
 丸佳浩(広島)が2年連続で1位となった。この年は驚くべき130四球を獲得。130以上の四球を獲得したのは過去に王だけであった。またこの年の丸は125試合出場。規定打席に到達しながら四球が出場試合を上回るのも王以来のレアな記録である。これだけの四球があるため、当然出塁率.468は1位。wOBAも.462と相当に高いレベルでの1位を記録した。
 
 2位には山田哲人(ヤクルト)が前年の11位から復調してのランクイン。この年もトリプルスリーを達成。この直近4年間で3度目の記録である。二塁打30、三塁打4は丸を大きく上回った。四球も100を超えていたことから、丸に迫る高いwRAAを記録している。なお山田は33盗塁で盗塁王を獲得したが、失敗はわずかに4個。過去3度のトリプルスリーを記録した年はすべて盗塁王となっているが、3シーズン合計97盗塁10盗塁死で成功率は驚異の.907であった。
 
 3位に入ったのは鈴木誠也(広島)。OPS(出塁率+長打率)の算出要素としてあるように、打撃の貢献は基本的に出塁率と長打率によって決まる。ただここから四死球などを除いた打率+長打率で見ると、スイングしたとき限定の打力がわかる。鈴木は2019年までの3年間この打率+長打率において最強の打者であった。
 
 5位のダヤン・ビシエド(中日)は打率.348で首位打者。7位ネフタリ・のソト(DeNA)が41本で本塁打王と最高長打率.644を記録。打率や本塁打など旧来型の指標を見ただけではソトの7位という評価は意外に低いものと感じられるかもしれない。これは打席数の少なさや、出塁面で上位選手に劣るためである。9位のウラディミール・バレンティン(ヤクルト)は131打点で打点王を獲得。意外なことにこれが初の打点王であった。また新しいスター候補として、6位に岡本和真(読売)が初めてランクインしている。
 
 ベスト10圏外の選手としてはパ・リーグの森同様、打者としても活躍した捕手の會澤翼(広島)を挙げる。捕手は全ポジション中で最も打力が弱く、通常であればwRAAの評価でもマイナスを記録するのが普通のポジションである。ここにwRAAプラスマイナスゼロのレギュラーが居た場合には他球団に対して10得点を確実に超える強みを持つことになる。この意味で強打の捕手の存在は影響力が大きい。
 
 ベスト10常連の糸井嘉男(阪神)は欠場のためにこの年は12位に終わっている。記録した本塁打は16本。「本塁打を記録したシーズンはすべて奇数本」「10年連続奇数本塁打」の記録が途絶えることとなった。
 
(※1)wRAA:リーグ平均レベル(0)の打者が同じ打席をこなした場合に比べ、その打者がどれだけチームの得点を増やしたかを推定する指標。優れた成績で多くの打席をこなすことで値は大きくなる。
(※2)勝利換算:得点の単位で表されているwRAAをセイバーメトリクスの手法で勝利の単位に換算したもの。1勝に必要な得点数は、10×√(両チームのイニングあたりの得点)で求められる。
(※3)wOBA(weighted On-Base Average):1打席あたりの打撃貢献を総合的に評価する指標。
(※4)平均比:リーグ平均に比べwOBAがどれだけ優れているか、比で表したもの。
(※5)UZR(Ultimate Zone Rating):同ポジションのリーグ平均レベルの守備者が同じだけ出場した場合に比べ、守備でどれだけ多くの失点を防いだか。
 
DELTA・道作
 
DELTA@Deltagraphshttp://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。
 
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