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阪急が史上最強クラスの打線を構築 セイバーメトリクスの視点で過去の打撃ベスト10を振り返ろう~1978年編~

2020/08/17

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Getty Images, DELTA・道作



1978年のセ・リーグ

チーム  試合 勝率 得点 失点 得失点
ヤクルト 130 .596 648 633  15
読売   130 .570 606 508  98
広島   130 .554 713 596  117
横浜大洋 130 .529 596 554  42
中日   130 .427 509 635  -126
阪神   130 .339 532 678  -146
 

 
 王貞治(読売)がwRAAランキング1位から陥落。代わって1位になったのは山本浩二(広島)である。特に注目すべきは.662を記録した長打率で、2位の王に対して5分の大差をつけた。王はすべての数字を悪化させたが、出塁率.445は依然としてリーグ首位。さらに若い世代で、今後山本とリーグ最強を争うと予想される掛布雅之(阪神)が3位に入ってきている。掛布は翌年、長打力に偏った成績を残すが、この時点までは出塁・長打のいずれにも偏っている様子は見られない。同じ阪神ではこの年を最後に西武に移籍する田淵幸一が10位にランクイン。前年に続きこの年も欠場の多さが目立つ。

 4位・5位の高木嘉一(横浜大洋)・水谷実雄(広島)は上位選手が派手な分だけ埋没した感がある。高木は満遍なく良好な数字を残したが突出したところはなかった。水谷は首位打者を獲得したものの山本浩二率いる強力広島打線の一選手といった印象だ。この年の広島は史上初めて200本を超える本塁打(205本)を放ったチームだった。
 
 この年はパ・リーグ編でも紹介したように阪急の打線が強力で、両リーグに歴史的強力打線が存在していた。広島はベスト10の2人に加え、40本塁打のエイドリアン・ギャレット、30本塁打の衣笠祥雄、33本塁打のジム・ライトル、打率.302を記録した高橋慶彦(15盗塁20盗塁死は奇妙なスタッツだ)を抱え、他チームを圧倒していた。得点は713で阪急よりわずかに多かったが、この年のセ・リーグは得点の入りやすいシーズンであったため、セの5球団は平均で578.2点を挙げていた。阪急ほど他球団に差をつけられておらず、これが優勝を逃がした一因である。
 
 ヤクルトが初優勝を遂げているが、前年とまったく同じ若松勉、チャーリー・マニエル、大杉勝男の3人がベストテンに入り、広島に次ぐ648得点を挙げている。ほかのチームには付け入る隙なしと見えていた阪急を日本シリーズで下したのは少々意外でもあった。
 
 ベスト10圏外で取り上げた注目選手は前述した広島のギャレットである。40本塁打以上を記録しながらベスト10から外れたのは、1976年のハル・ブリーデン(阪神)以来NPB史上2人目であった。
 
(※1)wRAA:リーグ平均レベル(0)の打者が同じ打席をこなした場合に比べ、その打者がどれだけチームの得点を増やしたかを推定する指標。優れた成績で多くの打席をこなすことで値は大きくなる。
(※2)勝利換算:得点の単位で表されているwRAAをセイバーメトリクスの手法で勝利の単位に換算したもの。1勝に必要な得点数は、10×√(両チームのイニングあたりの得点)で求められる。
(※3)wOBA(weighted On-Base Average):1打席あたりの打撃貢献を総合的に評価する指標。
(※4)平均比:リーグ平均に比べwOBAがどれだけ優れているか、比で表したもの。
 
DELTA・道作
 
DELTA@Deltagraphshttp://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。
 

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