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サッカー選手より勝る野球選手の身体能力。日本人に必要なのは過度な筋トレよりも柔軟性

どんなスポーツにおいても、十分なパフォーマンスを発揮する上で土台となる身体づくりが重要だ。Oriental Physio Academy代表の波田野征美氏はこれまで、さまざまなスポーツ競技のアスリートのカラダを診察してきたが、その経験則から、野球選手のほうがサッカー選手よりも身体能力が高いと感じる一方で、過度な筋トレによって柔軟性を奪い、それが逆にケガやパフォーマンスの低下をもたらすと警鐘を鳴らす。

2014/10/09

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重要なのは柔軟性

 こと“身体の使い方”に関する知見において、現時点で野球界はサッカー界よりも一歩先を行っていると考えられる。では、野球選手の高いパフォーマンスを実現している身体能力とは何だろうか? 一言で表現すれば、それは『柔軟性』である。

 例えば、投手が投げるボールの球速に影響を与える要因は、大きく分けて3つある。「肩関節の外旋角度」「体幹の傾斜角度」、そして「ストライドの広さ」だ(厳密には、ストライドの広さを構成するのは足腰の筋力、股関節や骨盤の柔軟性・分離性など)。一方、コントロール技術に関しては、股関節や体幹における側屈、回旋の柔軟性も必要になってくる。投手を例に書いたが、これらはもちろん打者にも必要な要素だ。パフォーマンスの高い野球選手は、投球・打撃いずれにおいてもこの柔軟性をうまく使っている。イチローは、その典型的な例だ。
 
 サッカーにおいても、世界トップレベルの選手の動きは柔軟性に富み、バランスの良い身体の動き方を実現している。ブラジルのネイマールなどは、その好例と言えるだろう。しかし、日本のプロサッカー選手を見ると、必ずしもそうしたレベルには達していない。強烈なキックを蹴るよりも、パスやトラップなどのコントロール技術を優先されているためか、全身を協調させて使うよりも足先だけで扱おうとするプレーが多く見られる。

本田圭佑や香川真司といった日本を代表するレベルの選手であっても、身体の使い方という観点からは課題が多い。両選手とも体幹や肩甲帯の柔軟性が低く、歩いたり走ったりしている時に肩が動かずに腕だけの振りになっており、肩甲帯がへばりついてしまっているのがよくわかる。こうした“固い”身体では、ダイナミックな姿勢のコントロールは難しい。そして、年齢を重ねるごとにその傾向は顕著になってきている。2人とも全盛期のようなドリブルやボールキープはできなくなっており、シュートのコントロール技術も低下している(本田は確かに結果を残しているが、それは判断力の向上によるものであり、身体的には全盛期と比較し明らかに衰えている)。

 そもそも、“固い”とはどういう状態を指すのか? 「筋トレし過ぎると身体が固まる」という話は昔から言われているが、具体的に「固まる」とはどういうことか? それは、一言でいえば「精度の高い動きができなくなる」ことだ。
 
 例えば香川はセレッソ大阪時代、自由自在に背骨を動かし、体幹を丸める・反る動き、切り返しやターンなど左右の動きに加え、緩急を加えた前後の動きができる選手だった。しかしマンチェスター・ユナイテッド時代に肉体改造をした影響のせいか、胸板は厚くなり、見るからに身体が大きくなったものの、特長だった前後左右の自在な動きは失われた。ドルトムントに復帰した後も、未だ全盛期のパフォーマンスには達していない。

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