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笑顔ある猛練習。倉義和が捕手を鍛え上げるために続ける工夫――カープ出身の指導者たちが語る「カープの育成術」#5

V奪還を目指し新体制となった広島東洋カープ。佐々岡真司新監督をはじめ、カープ出身の指導者たちが語った一流選手を育てる「カープの育成術」とは。カープ戦実況歴20年、長年カープを見てきた中国放送(RCC)アナウンサー・坂上俊次氏の新刊『「育てて勝つ」はカープの流儀』から一部抜粋で公開。

2020/03/11

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『ワンバウンドの捕球』が最重点科目

 短い距離から投げられたワンバウンドの投球を捕り続ける。絶対に逸らさない。体に当ててでも止めるのである。ともすれば、悲壮感が漂いそうな反復練習である。これが、カープ投手陣を支えてきた。フォークを武器とするストッパーの永川勝浩が引退会見で残したコメントが印象的だ。
 
「ベースの前でバウンドするようなフォークをキャッチャーのみなさんが、体を張って止めてくれました。キャッチャーが優秀なので、ランナー3塁でも思い切ってワンバウンド(のフォーク)を投げられました。ありがたかったし、心強かったです」
 
 これほど誇らしい言葉はない。歴代のバッテリーコーチは、常に、『ワンバウンドの捕球』を捕手の最重点科目に位置づけてきた。ただ、猛烈な反復が必要である。プロ19年、41歳まで現役だった倉義和も、この練習には相当の時間を割いてきた。
 
 しかし、彼がコーチとなった今、ワンバウンド捕球の練習で選手から明るい声が響き、笑いが起こることもある。それは、ほんの小さな工夫から生まれたものである。
 
 ボールがバウンドする土のグラウンド、キャッチャーの手前に小さなポリウレタン製のカラーコーンを置くのである。サッカーのドリブル練習やウォーミングアップのときにトレーナーが芝の上に置く、蛍光色の小さなものを想像してほしい。このひと工夫だけである。
 
 コーチの倉がワンバウンドのボールを投げる。基本的には、捕手は体やミットで止めるのだが、時折、小さく柔らかいカラーコーンがいたずらするのである。ボールはコーンに当たると、野球の実戦ではないようなイレギュラーバウンドをするのだ。
 
「障害物を入れてワンバウンドをイレギュラーさせると、選手は、いつもと違う新鮮な感覚で練習ができます。やらないといけない練習でなく、やってみたい練習にしていきたいです。そうすれば、自分から取り組める練習に変わっていくと思います」
 
 奇妙なワンバウンドに選手が笑い声を起こすこともある。あれほど、地味でハードな練習も、ひとつの工夫で大きく変わるのである。基本練習に嬉々として取り組む姿に、倉は目を細める。
 
「捕手の練習メニューは大きく変わっていません。やるべきことは同じです。しんどいものなのは変わりませんが、少し楽しさや新鮮さが加えられればと思います。他球団の練習なども見ながら、あきさせないような工夫を考えています。ただ実際は、何度も言いますが、同じことの繰り返しです」

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