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カープはいかにして一流選手を育て上げるのか。――カープ出身の指導者たちが語る「カープの育成術」#1

V奪還を目指し新体制となった広島東洋カープ。佐々岡真司新監督をはじめ、カープ出身の指導者たちが語った一流選手を育てる「カープの育成術」とは。カープ戦実況歴20年、長年カープを見てきた中国放送(RCC)アナウンサー・坂上俊次氏の新刊『「育てて勝つ」はカープの流儀』から一部抜粋で公開。

2020/03/05

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70年の歴史を凝縮したような男が監督に就任

 つくづく独特な競技である。マウンドに立てば一人で打者に立ち向かわなければならず、打席では自分の培った技術だけが頼りだ。野球には個人競技の側面がある。それでいて、チームスポーツであることに違いない。ときに個人技であり、ときに団体戦、まさに社会の縮図のようである。だからこそ、我々は自分の人生をこの競技に重ね合わせ、日々の活力をもらい、生きるヒントを見出すのかもしれない。
 
 カープの歴史は70年を迎えた。球団草創期の資金難に伴う苦労、FA制度導入や球界再編の荒波もあって、低迷期も味わった。そんなチームの光は、「理念」と「工夫」それに「チームワーク」であった。
 
 2019年秋、70年の歴史を凝縮したような男が、カープ19代監督に就任した。通算138勝のエース佐々岡真司である。入団2年目の1991年には17勝の活躍でリーグ優勝の原動力となった。そこから18年、先発のシーズンもあればストッパーを任されたシーズンもあった。それだけではない。シーズン途中に先発からブルペンに転向したこともあった。
 
先発投手として100勝、守護神として100セーブ、この献身の記録は江夏豊氏以来史上2人目という偉業だ。通算66完投、1シーズン15完投は近年の野球界ではなかなかお目にかかれない数字である。完投・完封はもちろん、ノーヒットノーランも達成している。低迷期には、孤軍奮闘で投げ抜いた時期もあった。
 
右腕にすべてを背負ったエースでありながら、「孤高」という言葉は似つかわしくない。「野球はあくまで集団競技」と言い切る男は、野手の守りに感謝し、ファンの声援を力にしながらマウンドに立ち続けてきた。だからこそ、誰からも愛され、チームメイトは意気に感じて熱いプレーで彼を助けてきた。
 
 監督就任にあたって強調する言葉は「一体感」。担当コーチやスタッフの話に耳を傾け、ドラフト会議にあたってはスカウト陣を最大限にねぎらった。フェニックスリーグ、秋季練習、さらには自主トレまで視察した。戦力の把握だけではない。ベテランから若手まで直接声を掛け、コミュニケーションを図った。当然、選手のモチベーションアップにつながるはずである。
 
 V奪回へ、近道は選ばない。巨大補強やトリッキーな作戦ではなく、「育てて勝つ」野球で球団のメモリアルイヤーに花を添える心意気である。

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