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いまだ防御率0.00! 「ツバメの守護神」バーネットはなぜ復活したのか【新・燕軍戦記#6】

ここ2年はケガもあって不本意な成績に終わっていたヤクルトのトニー・バーネットが、今季は安定感あふれるピッチングを続けている。昨年限りでクビになっても不思議ではなかった「ツバメの守護神」に、いったい何があったのか・・・・・・。

2015/06/09

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「スピードもキレもコントロールも去年とは違う」

 これから9回表を迎えようという神宮球場に印象的なギターリフが鳴り響き、そこにドラムのビートが加わる。長いアゴひげがトレードマークの2人のフロントマンで知られる米国のロックバンド、ZZトップの『Sharp Dressed Man』に乗って小走りにマウンドへ向かうのは、こちらもワイルドなひげでお馴染みのヤクルトの守護神バーネット。もう何年も繰り返されてきた光景だが、スタジアムを包む空気は昨年までとはずいぶん違う。

「ボールのスピードもキレもコントロールも、去年とは明らかに違う。落ち着いて自分のペースで投げてる感じがしますね」

 ヤクルトの真中満監督も賛辞を惜しまない。6月7日の千葉ロッテ戦(神宮)ではエラーがらみで1点を失い、開幕からの連続無失点セリーグ記録にはわずか1試合及ばなかったものの、防御率はいまだに0.00。14度のセーブ機会で失敗はただの1度もない。

 もっとも昨年のシーズンが終わりを迎えようとしている頃、その立場は非常に微妙なものだった。2013年は右内腹斜筋肉離れ、2014年は左ヒザ後十字じん帯の部分断裂に左外腹斜筋の損傷と、たび重なる故障で精彩を欠き、この2年で挙げたセーブは計21。微妙な判定や味方の拙守に苛立っては自滅することもしばしばで、昨年限りで契約が切れたこともあり、そのままクビになっても不思議ではなかった。

「僕もアメリカに行ったんだけど、良いピッチャーはいても獲るのが難しい。限られた中で探しても、バーネット以上の球を投げるピッチャーはいなかった。もともと良いボールを持っているし、気持ちを乱すことなくキチッと投げれば結果は出ると考えたわけです」

 バーネットと新たに1年契約を結んだ理由を松井優典編成部長はそう話すが、その見込みはズバリ当たった。真中監督が「今考えると、2月のキャンプ初日から全開で入ってきていた。一番仕上がってキャンプに来たよね。ああいうのがシーズンにつながってるのかなと思います。それぐらい気持ちが入っていた感じがしますね」と振り返るように、今シーズンにかけるバーネットの思いには並々ならぬものがあった。

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