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愛された男・矢野謙次が残した財産――チームに伝えつづけた圧倒的な熱量【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#87】

ファイターズの2018年シーズンが終了した。今シーズン限りで矢野謙次が引退したが、最後までチームの一員として戦い、大きな財産を残してくれた。

2018/10/21

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感動的だった引退セレモニー

 ファイターズは2018年シーズンの戦いを終えて、人事の季節を迎えている。選手・コーチの去就や、ドラフト候補の新人の名前が見出しを飾っている。北海道はファイターズのCSが終了した途端、てきめんに寒くなった。つい先日まで熱戦に釘付けだったんだけどなぁ。
 
 もちろんCSファイナルは楽しんでいる。応援するチームが出なくてもポストシーズンは見応えがある。ただもう一つ僕には楽しみがあって、それは身体の空いた球団&メディア関係者と会食することだ。それぞれの持ち場で見た「2018年シーズン」を肴に飲み会だ。仕事のつもりじゃないからオフレコ話も飛び出す。ま、聞いてもそれは仁義として書かない。それよりも「答え合わせ」みたいな楽しさがあるのだ。自分はあの試合、こう見ていたけど、そっちの現場ではどう見えていたの? あのときのあの報道はどういう背景があったの?
 
 僕の感覚としては柔道の「乱取り稽古」だ。揉み合うことで実戦の勘を磨くイメージだ。先方も同じ感じだと思う。野球関係者は、オフに人と逢う習慣が身についている。シーズン中はね、やっぱり試合中心の生活だから。というわけで今回の話は関係者から聞いたもの。相当いい話だから外に出していいんじゃないかなぁと思い確認を取った。
 
 矢野謙次の話だ。通称ヤノケン。今季いっぱいで巨人、日本ハムと続く16年のプロ生活に終止符を打った人気プレーヤーだ。まだ耳の奥に札幌ドームで行われた引退試合のスピーチの最後の絶叫、「ファイターズ最高おーっ!」が残っている。巨人でもそうだったが、ファイターズでも本当に愛された。みんなヤノケンが大好きだった。それはファンだけでなく、チームメイトやスタッフも含めて。
 
「ヤノケンさんの引退試合、感動的でしたね」、話はそれが発端だったのだ。イースタンではジャイアンツ球場で戸根千明から3ランを打ち、試合終了後、両軍の選手から胴上げされている。その後、1軍にコールアップされ、札幌ドームの引退試合になった。ロッテ・唐川侑己からクリーンヒットを放ったときは場内沸騰だ。そして感動的な引退セレモニーが執り行われる。ロッテ側からは高校の先輩・井口資仁監督や、チームメイトだった岡大海選手からも花束が贈られた。スピーチで印象に残ったのは「16年間一度もレギュラーをとったこともなく、生え抜き選手でもない私にこれだけの晴れ舞台を用意してくださったことに心から感謝しています」というフレーズ。いや、むしろレギュラーをとったことのない選手が輝いているところに皆、魅了されたんだ。

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