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亡き母と交わした約束を叶えるために DeNA・山下幸輝が大切にしてきたもの

7月28日の巨人戦でDeNAのルーキー・山下幸輝内野手がプロ初安打そして初打点を挙げた。とりわけ体格や身体能力がずば抜けていない彼が現在の立場を掴んだ裏には、野球へのひたむきな姿勢と周囲の人々への感謝があった。

2015/07/29

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高木遊



山下幸輝ミーティングサイズそのまま
その明るい性格が多くの人を惹き付ける山下or国学院大時代は勝負強い打撃と強肩を生かした守備でベストナインも獲得した。
 

バット投げの練習を黙々と……

「山下の強さはね、野球がうまくなるためなら何でもするところ。その向上心には一点の曇りもない」
 
 山下幸輝を4年間指導した国学院大の鳥山泰孝監督は、彼の人間的な強さをこう評した。大学4年生だった昨年は「小学生以来」と本人が話す主将に就任。
 
「勝ちたい気持ちが最も伝わる選手」と鳥山監督に信頼を置かれた山下は、技術面だけでなく、精神面でも大きな成長を遂げ、優勝にこそあと一歩届かなかったものの、チームを春秋連続の東都大学リーグ2位に導いた。
 
 大学3年時からは、学生ながら自腹を切って実績のあるメンタルトレーナーと契約するなど、これだと思ったことを貫く強さに加え、探究心も旺盛で様々な人からの意見を聞き入れる度量の大きさがある。
 
 また自らの感覚も大切にし、他人から見ればおかしな練習を黙々とすることもある。
 
「野生の勘や独特の世界観を持っていましたが、それでいて冷静。よく考えていました」 
 そう振り返るのは、国学院大のマネージャー時代に自主練習のパートナーも務めることが多かった同期の小田垣潤一郎だ。時には指導者からのアドバイスを黙々と地道に取り組むこともあれば、時にはそのアドバイスを山下流に昇華させた練習を無心で行うこともあったという。
 
 そのひとつが「バット投げ」。4年春のリーグ優勝争いで当時、亜細亜大のエースだった山﨑康晃(DeNA)から放ったサヨナラ満塁本塁打などは、その会心の打球はもちろんのこと、必ず美しいバット投げが印象的だ。これを山下は自主練習時の空いたスペースで黙々と繰り返していたという。好調かどうかのバロメーターをこの部分に着目して取り組む選手は、あまりいないだろう。
 
 中学時代には、突然山登りのトレーニングを発案して実行したり、高校時代には、現在の強肩を作ったとも言える遠投を毎日取り組んだ。
 
 肩の痛みがあった際でも「痛い時こそ、投げて治すんだよ」と心配する周囲に言ってのけたという。
 
 風変わりなエピソードが生まれた要因はすべて、「野球がうまくなるために」という純粋なその一心に帰結する。そしてそれを前向きに取り組む。
 
「“人生楽しそうだね”とよく言われるのが自慢です」と山下は以前に笑いながら話していた。
 こうしたことが、とりわけ体が大きいわけでもなく、他を圧倒するようなパワーやスピードが無くても、彼がここまでそして今以上のパフォーマンスを発揮する基礎となっているのは間違いない。

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