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落合博満が”打席でバットを振らなかった理由”。落合流オープン戦の考え方【横尾弘一「野球のミカタ」】

オープン戦が本格的に始まる。各球団、3月末の開幕に向けてチームの形をつくっていく時期だ。オープン戦はどんな見方をすると面白くなるだろうか。(2015年3月1日配信分、再掲載)

2015/03/01

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横尾弘一



選手にとってのオープン戦は、多様な目的がある

 約1カ月間のキャンプを経て、プロ12球団はオープン戦をこなしている。新人、新外国人、移籍を経験した若手選手にとっては、実戦で自分のプレーをアピールしていく場だし、定位置確保に向けた競争が繰り広げられているポジションもあるだろう。
 
 その一方で、ベテランや実績のある選手にとってはペナントレースに向けた調整であり、結果がどうあれ自分自身が納得できるパフォーマンスを発揮することが大切だ。このように、オープン戦が公式戦と大きく異なるのは、選手によって臨むべき目的が多様な部分だ。その中で監督は、優勝を目指せるチームの形を開幕から逆算して作っていく。
 
 中日監督時代の落合博満は、「シーズンオフに描いた青写真をキャンプで修正すれば、監督の仕事は8割方終わったも同然」と語っている。
 
 例えば、メディアに対して「レギュラーはひとりも決まっていない。全員に横一線の勝負をしてもらう」と発言した監督がいるとしよう。
 
 だが、頭の中では8人のレギュラーはほぼイメージできており、開幕から一軍入りする投手陣の人数や顔ぶれも固まっているのだという。それを確認するのがキャンプであり、故障者や著しくパフォーマンスを落とす選手が出れば、オープン戦の間に手を打つのだ。開幕してもその作業を繰り返し、当初の青写真に近いまま戦えたチームが優勝にも近づくというわけか。
 
 一方、対戦相手の戦力、特に新戦力に関してはオープン戦で分析するようだ。
 落合監督時代の中日は、他の11球団に専属スコアラーを配置しており、集められる情報は膨大かつ詳細であったという。ただし、落合自身はそのデータや数字を参考にしても、先入観は持たなかった。
 
「例えば投手の場合なら、キャンプ地の沖縄や九州でのオープン戦で好投を続けたと言っても、ペナントレースになればその球場のマウンドでは投げない。では、ストレートの質はどうか、変化球はどんなのを投げるのかと見ていっても、マウンドのほかに気温や湿度、風向きなどもシーズン中とは違うでしょう。だから、どういうフォームから投げるのか、どんな体の使い方をするのかを参考程度に見るだけ。メディアやファンはオープン戦の結果で期待を膨らませるけれど、こちらは自分のチームの新戦力に期待もしなければ、他チームで頭角を現してきた選手を警戒もしない。さぁ、開幕してからどうなりますか、という感じだね」

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