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スアレスを“発見”、デスパ獲得にも関与。SB異色スカウトに聞く、輝く原石の見つけ方

ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が終わってすぐ、プロ野球が開幕した。NPBの選手の中には、ベネズエラ代表に選出されたロベルト・スアレス投手やキューバ代表のアルフレド・デスパイネ外野手のように、WBCで国を背負って戦った助っ人選手が何人もいる。その前述した2人の発掘・獲得に関わった、中南米に拠点を置いて活動する福岡ソフトバンクホークスのスカウトマンに話を聞いてみた。

2017/04/06

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スアレスはクレバーで謙虚

 野球人気の高さを改めて裏付けたWBCの余韻も冷めぬ中、2017年シーズンが幕を開けた。この時期恒例のメディア、ファンによる順位予想も花盛り。混戦が予想されているセ・リーグに対し、パ・リーグでは福岡ソフトバンクホークスが圧倒的支持を得ている。
 
 昨季は、シーズン終盤にまさかの大失速でV逸という憂き目を見た2015年の王者にとって、今年がリベンジの年となるのは間違いないだろう。
 
 WBCでもソフトバンク組の存在感は際立った。内川聖一、松田宣浩の両ベテランはチームリーダーとしての役割を果たし、千賀滉大のピッチングは世界を驚かせた。そして、アルフレド・デスパイネはキューバ代表の主砲として打棒を振るった。
 
 そうした中、ケガにより無念の離脱となったものの、強豪ベネズエラ代表に選出された26歳の右腕ロベルト・スアレスの存在も忘れてはいけない。獲得時にはプロ経験に乏しく、工事現場などで働いていたことがクローズアップされ話題となっていた無名の青年は、昨季58試合に登板し、チーム最多の26ホールドと素晴らしい活躍を見せた。
 
 そのスアレスをメキシカンリーグで発掘してきたのがソフトバンクホークス中南米担当スカウトの萩原健太氏だ(萩原氏のこれまでの活動については昨年度のコラムを参照いただきたい-ホークス、選手発掘の眼は中南米にも。自ら道を切り開き、ドミニカで奔走する担当スカウト-)。今年も、宮崎キャンプ、WBC視察などで一時帰国中の萩原氏に話を伺うことができた。
 
――スアレス投手の昨季の活躍をどのように受け止めていますか。
 
「こんなに早くチャンスを掴むとは思いませんでした。このキャンプでも再会しましたが、相変わらずクレバーだし、何より謙虚ですね。メキシコリーグ時代には投げていなかったスプリットも日本で早々に習得しています。本人の向上心、吸収力、人のアドバイスに耳を傾ける柔軟さも素晴らしいのでしょう」
 
――WBCのベネズエラ代表にまで選出されました。
 
「彼はベネズエラのウインターリーグでもプレーしたことのない選手ですから、ベネズエラ人にとっても『誰だ?』という選手です。彼自身も代表選出にも驚いていましたよ。残念ながら右ヒジを負傷してしまいましたね。ただ、本人とも話しましたが、沈んでいる様子ではなく安心しています」
 
――選手の能力はもちろん、スアレス投手の人間性の素晴らしさについては去年もふれていましたね。
 
「ええ、メキシコで彼と初めて会った時に、ナイスガイだと思いました。工事現場や、タクシーの運転手などを経験している苦労人ですし、社会的な常識人でもあります。例えば、ラテン系の選手に、日時を指定し、書類をそろえて役所に行ってくれとお願いをします。全く難しいことではないですが、意外とうまくいかないんです。
 
 スアレスはこうした面でもしっかりしていました。また、昨オフには、ドミニカに住む私の元に旅行で来てくれ『ケンタが俺を拾ってくれたおかげでチャンスを掴めた』と言ってくれるんです。本当にスカウト冥利に尽きますし、こうした彼の謙虚さに感心しました」
 
――2016年度の活動について聞かせてください。
 
「昨年同様に、4月からはメキシコリーグでのスカウト活動に多くの時間を割きました。そして、メキシコのシーズン終了後には、中南米各地でウインターリーグが開幕しますから、そちらでのスカウティングです。そうした中で、松坂大輔投手のプエルトリコリーグ参戦のサポート、デスパイネ選手の獲得のサポートも行いました」
 
――デスパイネ選手の入団発表の写真内には萩原さんも写っていましたが、どのような形で入団交渉に関わっていたのでしょうか?
 
「とにかく非常にプレッシャーがかかる仕事でした。ただ、リーグの視察も含め、この1年キューバには頻繁に足を運びました。向こうの連盟の方たちには『お前また来たのかよ』『いっそのことキューバに住んだら』などとよく冷やかされていました。
 
 ラテン世界は”アミーゴ(友達)社会”ですから、一見さんには冷たいところもありますし、顔を繋いでいくことは非常に大事です。他球団もスカウトなどを中南米に送りますが、腰を据えてという感じではないようですし、この点でウチは中南米球界では他球団よりも多少いい印象を持ってもらっているのではと思います」
 
――一方で、昨季のスアレス投手のように、萩原さん自身の手で獲得した選手はいなかったということですが。
 
「もちろん、球団には適宜リストアップして報告していますが、残念ながら、スアレスクラスの選手はいなかったということです。11月の侍ジャパンと対戦したメキシコ代表に選出されていたマリオ・メサという投手には注目していましたが、米国球界と契約してしまいました。それでもスアレスほどの魅力は感じませんでした。
 
 今回の宮崎キャンプで田中正義投手、高橋純平投手、松本裕樹投手といったうちのドラフト1位選手の実力、素材を見てきました。やはり彼らに匹敵するような素材でないと外国人を獲る意味はないと思っています。
 
 数カ月間、各地を渡り歩いても球団に自信を持って薦められる選手がいなかったらそれは仕方がないということです。球団もその点はよく理解してくれているので非常に感謝しています」

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