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クロマティが嘆く日本プロ野球の組織図。夢を追い海を渡った若者と孤立した指揮官の溝【『サムライ・ベアーズ』の戦い#5】

皆さんは、かつて巨人で活躍したクロマティが、アメリカの独立リーグで日本人だけのチームの指揮官として戦っていたことをご存じだろうか。そのチームは『ジャパン・サムライ・ベアーズ』と名づけられた。

2017/01/29

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阿佐智

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スキルを向上させる場が日本になかった

 サムライ・ベアーズは、ウォーレン・クロマティの思うように機能しなかった。私は思い切って尋ねてみた。ゲーム中、選手にイライラさせられたことが多かったのではないか、選手たちにはあなたの期待に沿う力がなかったのではないか。
 クロマティの表情は穏やかなまま変わることはなかった。そして、静かにこう言った。
 
「彼らはグッドティーチングを受けてこなかったんだ。高校を卒業して、ドラフトで指名もされず、社会人にも進めなかったらどうするんだい?独立リーグ?そんなもの日本になかっただろ。だから彼らは海を越えてアメリカに来たんだ。シーズン途中で入ってきた選手の中には日本のプロでプレーした経験をもつ選手も何人かいたけど、何年もいたわけじゃない。だからサムライ・ベアーズに活路を求めたんだ」
 
 クロマティは言う。日本には選手のスキルアップの場がなかったんだ、と。アメリカには、トップのメジャーリーグの下に幾重にもマイナーリーグの組織がある。この組織外の独立リーグを含めると、7000人を超える若者が、野球漬けになって夢を追いかける環境がアメリカには存在する。
 
「いったい日本にはいくつ高校のチームがあるんだ?4000?その中から何人がドラフトされるんだ?30人ほどだろう(編集部注:2016年のドラフト会議は育成含めて115人が指名された)。実力不足の選手はドラフトされないだろう。そこが日本のダメなところだ。マイナーリーグのシステムがない。彼らはもっと野球を学ばねばならない。なのに、日本にはファームは一つしかないだろ(編集部注:2005年から四国アイランドリーグが創設されている)。だから多くの選手がプロになる機会を失う。結局、彼らには自分のスキルを向上させる機会がなかったんだ」
 
 クロマティの口調は次第に熱を帯びてきた。だから、自分が正しいティーチングをしようしたんだと。しかし、その彼の熱意は日本からやってきたサムライたちに伝わることはなかった。彼自身、サムライたちはルーキーレベルを超えることはなかったと言う。クロマティの口調は、ため息に変わっていた。
 
「私は彼らをメジャースカウトのお眼鏡にかなうようにしてやりたかった。彼らにとってあそこが最後のチャンスだったからね。でも、メジャーの球団と契約できたのは、1人だけだったけどね(実際には2人)。あの若いピッチャー、名前は……。」

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