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首脳陣も認めるヤクルト坂口の価値――今季チームMVP級の活躍、自由契約からの華麗なる復活劇【新・燕軍戦記#34】

今季は主力の野手に故障者が相次いだ東京ヤクルトスワローズにあって、シーズンを通して試合に出続け、リーグ10位の打率.295をマークしたのが坂口智隆である。数字に表れない部分も含め、その働きは今季のチームMVPに値するといっていい。

2016/11/11

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必死な姿が他選手に好影響をもたらす

「どうせならまったく知らないところに行ったほうが、リーグまで変わってしまったほうがいいのかなって。新しいところでもう1度チャンスをもらえるなら、まったく知らない環境でやってみたいというのがあった」

 それが、坂口智隆(32歳)が“新天地”にヤクルトを選んだ理由だったという。2002年のドラフト1巡目で近鉄に入団して以来、オリックスとの合併後もバファローズ一筋にプレー。しかし昨秋、13年間プレーしてきたそのチームを去り、新たな環境を模索した。

 慣れ親しんだ関西、そしてパリーグを離れ、文字どおり「まったく知らない環境」に身を置いた移籍1年目。坂口はしっかりと結果を残した。青木宣親のメジャー移籍後、不在だった正中堅手の座に収まり、故障者続出の中でチーム最多の141試合に出場。自身5年ぶりの規定打席に到達し、リーグ10位の打率.295、同7位の出塁率.375をマークした。

 だが、今シーズンを振り返り、坂口の口から真っ先に飛び出したのは「悔しい」という言葉だった。
「個人的にもチームもそうですけど、両方とも悔しいほうが強いかなって思いますね。チームとしては少しでも上を目指してやっていたわけですし、個人的にも3割に届かなかったっていう点では、すごい悔しさが残りますね」

 チームは昨年のリーグ優勝から、今年はBクラスに転落。坂口自身は残り5試合の時点で打率3割をキープしていたが、右ヒジや足に痛みを抱えながら最後まで出場を続け、6年ぶり3度目の3割を逃す結果となった。それでもここ数年、なかなかシーズンを通してプレーできなかったのを思えば、最後まで試合に出続けたことには大きな意味があった。

「あそこ(残り5試合)で休んでればって? そこは僕が決めれることでもないですし、(首脳陣に)行けと言われれば行きますし。でも、最後までグラウンドに立てたってことは、ここ何年かを考えたら、僕にとってはそれ(3割)以上に価値があるのかなと思いますね」

 そんな坂口を「チームに来てくれて本当に良かった」と評するのは、三木肇ヘッドコーチである。
「けっこう泥臭いタイプでね、気持ちも前に出るし、必死にやってる姿に他の選手も良い影響をもらったと思う。打者にとって3割っていうのはすごく大きな数字だし、本人ともいろいろ話しながらだったんですけど、順位も決まらない中で最後までチームとして勝つためにやるっていうのと、あいつ自身も『1年間最後までやりきる』っていうのが(目標として)あったんでね。勝つためにはあいつの力が必要やったし、そこを理解して最後までしっかりやってくれたっていうのは、選手としては当たり前かもしれないけど、僕らも感謝してます」

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