”奇策が警戒心をひっぱり出す”万波中正、ツーランスクイズ成功の効果【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#255】
8月5日の西武戦、3回に万波中正が「金農旋風」の2018年を思い出させる2ランスクイズを成功させて、一気にビッグイニングをつくった。
2025/08/09 NEW
産経新聞社
何をしてくるかわからない新庄采配
ていうか、録画を見直して気づいたのだが、万波本人がサインに驚いている。打席を外し、サインを確認して一瞬目が泳いでいる。で、打席に入ってからすこーし目が潤む。この間、「マジかー?」→「やるしかない」という心理過程がある。万波が人知れずスクイズの練習をしていたとは思えないが、見事に決めた。球種がストレートでよかったともいえる。あれが変化球だったら厄介だった。特に落ち球。もっとも武内にはフォークのイメージがない。そこら辺も奇襲企図の前提になっていたかもしれない。
結果的に5点奪取のビッグイニングが成立し、ファイターズは試合の主導権を握る。新庄監督は上機嫌、エスコンは大盛り上がりだ。ファイターズファンは2点タイムリーより喜んだと思う。あんな鮮やかに、敵のウラをかいて、まんまとツーランスクイズを成功させたのだ。プロ野球にはホームランや大逆転、サヨナラ勝ちetc、と盛り上がる要素がいっぱいあるけれど、「痛快さ」という点でツーランスクイズは相当上位ではないか。
で、これはもちろん「新庄監督は何してくるかわからない」という相手チームの警戒をひっぱり出すのだ。思えば前任者の栗山英樹監督(現チーフ・ベースボール・オフィサー)も意識して色んな仕掛けのバリエーションを同一リーグの相手に見せていた。「あぁ、ファイターズはこういうこともやるんだ」と思わせたら戦いは有利になる。野球の本質はプレッシャーのやりとりだと思う。「1死2、3塁でツーランスクイズ仕掛けてくるかもしれないチーム」は「当たり前に打ってくるチーム」よりバッテリーに余計な警戒を強いる。こういうのはペナントレース佳境で効いてくるんじゃないか。万波中正グッジョブ!