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清宮幸太郎、オールスターを最高のきっかけに――打撃投手・高市俊のプロ技に感謝【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#254】

2025年のオールスター、主役は清宮幸太郎だった。ホームランダービーでのいいイメージをそのままに後半戦のバッティングへ生かしていきたい。

2025/07/26 NEW

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産経新聞社



ダービーの優勝へ導いた正確なコントロール

 恩人がいる。オールスター休みを返上して、ホームランダービーの打撃投手を務めてくれた高市俊さんだ。高市さんは元ヤクルトの投手。通算5年(15試合0勝2敗)でプロのキャリアを終えたが、帝京高時代は甲子園出場、青山学院大では東都大学リーグ3季連続のMVP、最優秀投手、ベストナインに輝いた球歴の持ち主だ。プロ引退後はファイターズの打撃投手として、縁の下の力持ちに徹している。
 
 今年からホームランダービーは時間制だ。高市さんは正確なコントロールで清宮のツボに投げた。サトテルとの対決は清宮の追い上げで逆転勝利となるのだが、あのときの「振っても振ってもホームランになる感覚」は高市さんがもたらしてくれたものだ。決勝進出のインタビューで清宮は高市さんに感謝を伝えた。BS朝日のカメラが高市さんをアップでとらえた。
 
 僕は水島新司のマンガ『あぶさん』で景浦安武がオールスターのホームラン競争に出た回を思い出した。景浦は打撃投手にファイターズの当時のエース、高橋直樹を指名する。気持ちよく景浦がホームランを連発するのを見て、ベンチの大沢親分は気が気じゃない。冗談でもハムのエースが打ち込まれるところなんか見たくない。だけど、ダービーを終えた景浦は高橋直樹に最敬礼するのだ。「おかげで気持ちよく打たせてもらった」。セ・リーグの強打者に勝つため高橋直樹の精密機械のようなコントロールが必要だったというオチだ。
 
 普段の打撃練習はハレとケでいえば「ケ」だ。晴れの舞台、オールスターで清宮幸太郎は普段と違う高度な集中力「ゾーン」を経験したのかもしれない。これがきっかけになったらすごい。高市俊さんのプロの技に感謝するしかない。

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