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清宮幸太郎、オールスターを最高のきっかけに――打撃投手・高市俊のプロ技に感謝【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#254】

2025年のオールスター、主役は清宮幸太郎だった。ホームランダービーでのいいイメージをそのままに後半戦のバッティングへ生かしていきたい。

2025/07/26 NEW

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産経新聞社



kiyomiyakotaro

2022年のMVPから3年、今やチームの主力

 清宮幸太郎は不思議な選手だなぁと感じた。マイナビオールスターゲーム2025(7/23京セラ、24ハマスタ)で「パ・リーグの顔」として、まんまとスポットライトを浴びてしまった。「まんまと」というのは聞こえが悪いかもしれない。実際、文句のない活躍だった。京セラの第1戦はホームランダービーに出場、阪神・森下翔太&佐藤輝明を続けざまに負かして決勝進出を決める。ハマスタの第2戦はホームランダービーの決勝こそ1本差でDeNA・牧秀悟に敗れたが、その代わり5打数3安打2打点1ホームランの大活躍、見事MVPを獲得し、テレビ朝日解説の古田敦也さんから「令和のお祭り男」の称号をいただいた。何しろ清宮はオールスター出場が2022年以来、2度目なのだが、2度ともMVPを獲得している。これはさすがの新庄剛志コーチ(オールスターでは全パのコーチ)も「あまり褒めたくないけど、MVPおめでとうございます」と賛辞を送った。
 
 「まんまと」の部分に話を戻そう。2022年のオールスター第1戦(ペイペイドーム)も「ちゃっかり」というか「まんまと」というか、2対2の同点で迎えた9回裏、広島・森下暢仁からサヨナラホームランを打って、みんな「ええっ」と声を上げるなかMVPをゲットしたのである。あれは僕らファンもびっくりしたが、清宮本人も驚いていた。打たれた森下もポカーンだ。まぐれというつもりはないが、多分にラッキーなホームランだったと思う。あの年はオールスター選出自体も「プラスワン枠」で、ちょっとゲタを履かせてもらった感じの出場だった。僕はラッキーは一発だったとしても、こういうきっかけで名を売って、いつか「パ・リーグの顔」になればいいと思った。
 
 それが3年後はパ・リーグ首位のファイターズの主力だ。三塁手として堂々のファン投票選出。ただ人気・知名度先行のきらいはある。去年初めて3割を残し、ホームラン15本、51打点と活躍したが、入団時の期待からはまだ遠い。今季前半戦の成績は2割6分8厘、8本、39打点(7/24現在)だ。例えば阪神の主砲・佐藤輝明の打率2割8分6厘、ホームラン25本、64打点(同じく7/24時点)にはだいぶ見劣りがする。京セラのホームラン競争は、存在感があるからうっかり「セ・パの首位チームの大砲の競演」に見えてしまうが、8本と25本の対決だった。ファイターズはまだ清宮幸太郎、万波中正、野村佑希のロマントリオを本当の意味で開花させていない。主砲はレイエスだ。そしてここまでみんなで勝ってきた。
  
 それが「まんまと」佐藤輝明以上の光を放つのだ。いや、「オールスターはまっすぐ主体の投球だから」とか「どうも使用球が飛ぶボールだったらしい」とか、そういう裏読みもあるんだろう。だとしても清宮が「持ってる」ことは誰も否定できないと思う。何か「幸太郎」という名前通りの、幸運というか天運のようなものを「持ってる」気がしてならない。僕は「まんまと」光を放ったなら、このまま「パ・リーグの顔」になりおおせてしまえばいいと思う。化けてしまえばいい。秋の日本シリーズでサトテルと勝負すればいい。後半戦調子を上げて、シリーズMVPをかっさらえ。
 
 僕はここ最近の清宮は気持ちが途切れてるんじゃないかと心配していたのだ。集中が続かず、エアポケットのような時間がある。凡ミスやエラー、軽いプレーをする。みんなでカバーしてるから小火(ぼや)で消し止められてるが、試合の流れやペナントレースの行方を揺るがしかねないミスがある。「清宮はエラーした試合は打つ」みたいな言い方自体、カバーしてくれてるのだ。みんなで彼の伸びやかさ、大らかさを守ってやっている。
 
 だから僕の見立ては(去年の夏場、レイエスと2人大活躍したのに比べて)ちょっとモヤるなぁ、であった。SNSで叩かれてるのも目に入ってくる。心配していたのだ。そうしたらオールスターで最高のきっかけをつかんだ。実は全パ・ベンチで新庄コーチからヒントのような言葉を貰っていたという。
 「『ホームランダービーから、いい打ち方をしているね』とホームランの前の打席くらいで話していて、それで打っちゃったので、ダービーのイメージで打席に立って、打てたのかなという感じです」

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