「できない楽しさ」を追求する 近藤健介選手が成長し続ける理由 【世界一の侍選手の育ち方】
2025/07/22 NEW
産経新聞社

昨年首位打者を獲得し、パ・リーグのMVPにも選ばれた近藤健介選手。そんな近藤選手の父・近藤義男が近藤家の子育てについて綴った『世界一の侍選手の育ち方 ふつうの息子がプロ野球選手になれたワケ』を上梓した。本書収録の野球を始めてから現在まで、一度も野球を嫌いになったことがない近藤選手へのスペシャルインタビューを一部抜粋して公開する。(文・ベースボールチャンネル)
「できる楽しさ」より「できない楽しさ」
――高校は神奈川の名門・横浜高校へ。この選択も、人生の大きなターニングポイントだったと思います。選んだ理由は何だったのでしょうか。
近藤 「プロに行きたかった」というのが一番です。プロに行くのなら横浜高校。自分で選びました。
――当然、やっていける自信はありましたか。
近藤 自信というか、「横浜高校でやれなかったら、プロには行けない」。1年春から試合に出させてもらったんですけど、その年の秋に先輩の筒香(嘉智)さんが、横浜DeNAベイスターズからドラフト1位指名を受けました。筒香さんが1位で入れるのなら、自分も4位ぐらいでは行けそうだなとは思いました。
――自信を持っていなければ、そういう考えにはならないですよね。高校でも、「野球が楽しい」という気持ちは変わりませんでしたか。
近藤 そこは変わりません。高校に入ってみてから、甲子園に行きたい気持ちが湧いてきて、甲子園を目指してチームで戦っていく面白さを感じるようになりました。
――今も含めて、野球を嫌いになったり、やめたくなったりしたことはほぼないですか。
近藤 ないですね。
――そのマインドこそが近藤選手の原点であり、今も成長し続けている理由だと思うのですが、ご自身ではいかがですか。
近藤 そうですね。野球が好きで楽しいと思うのは、ずっと変わりません。もっと、上手くなりたい。プロに入ると試合が毎日あって、その中でいろいろな課題が出てきて、どういうアプローチで課題をクリアすればいいのか……と考えるのが好きですね。
――少年野球のときから楽しかった野球が、プロ野球選手になった今も楽しいというのは、本当にすごいことだと思います。「楽しくなければ続けていけない」という気持ちを、根本に持っていたりしますか。
近藤 その楽しさは、人によっていろいろあると思います。ぼく自身は、「今できないことをどうやってできるようにするか」を考えることが、一番の楽しさです。
――なるほど。「できる楽しさ」よりも「できない楽しさ」。
近藤 「難しいから楽しい」みたいな感じです。何か、簡単にできてしまうとつまらないじゃないですか。
――成功者の思考ですね。お父さんが似たようなことを言っていました。課題にぶつかったときに、それを解決する能力を養うのが数学だと(数学科の教員)。
近藤 わかります。ぼくは、すべての教科の中で数学が一番好きかもしれません。問題があって、答えがあって、そこにたどり着く方程式を探すのが好きでした。バッティングは、絶対的な答えがないですけど、常に課題があって、そこに向き合いながら取り組むのが楽しいです。
――課題がなくなったら、楽しくないかもしれませんね。
近藤 課題がなくなることはないんですけどね。
――そういう感覚は中学時代から持っていましたか。
近藤 ありましたね。周りから「できない」と思われていることができるようになったときは、やっぱり楽しかったですね。
――お父さんは、成長のキーワードに「向上心」と「好奇心」を挙げていました。
近藤 そうかもしれません。何でもトライしたいですし、「これでいいかな」と思うこともほとんどありません。
書籍情報
『世界一の侍選手の育ち方 ふつうの息子がプロ野球選手になれたワケ』
近藤義男 著
定価:1980円(本体1800円+税)
プロ野球選手・近藤健介はなぜ誕生したのか?
父が語る近藤家の子育て
<スペシャルインタビュー収録>
近藤健介(福岡ソフトバンクホークス)
「父はやりたいことを存分にやらせてくれた」
子どもの夢の実現へ
幼少期、小・中学生時代に親ができること
【了】