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伸びしろしかない捕手・田宮裕涼の未来。途中交代に隠された飛躍のバネ【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#253】

7/8、9のロッテ2連戦、スタメンマスクの田宮裕涼にとって捕手として一段成長するきっかけを掴んだ試合になったのではないだろうか。

2025/07/12

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産経新聞社



まだまだ成長の余地がある

 思えば昨シーズン初めて、開幕スタメンを勝ち取り、1軍の戦力として稼働した田宮だ。今年は「(実質)2年目のジンクス」に悩み、自らを見つめ直してきた。その週、ファイターズは(2030年をメドとした)2軍施設の北海道移転を正式に発表、鎌ケ谷のファイナルカウントダウンが始まったのだが、開業から28年の間、鎌スタを彩った数々の名選手、スター選手の系譜に名を連ねるとしたら田宮裕涼に違いない。高卒ルーキー、鎌ケ谷育ち。同期の野村佑希、万波中正が注目され、一種エリートコースを歩んだのに対し、田宮は実力で這い上がった。僕は鎌ケ谷の「最後の代表作」だと思っている。鎌スタの外壁に写真入りで掲示されるクラスだ。
 
※もっとも2030年までまだ5年あるから、田宮以降の「最後の代表作」が出てくる可能性は高い。有薗直輝はいつブレークしても不思議はないし、5年もあったら柴田獅子は1軍の戦力だろう。
 
 ところで翌7/9のロッテ12回戦、これは13対1で勝った試合だが、田宮はホームランを打った次の打席で伏見に代えられている。この試合、田宮は4/30以来、久々に山﨑福也とバッテリーを組ませてもらった。試合は初回、レイエスの満塁弾で始まるワンサイドの展開だった。福也がつかまったわけでもなく、フツーに考えれば捕手を代える理由がない。が、新庄剛志監督は試合後、交代の理由を明かした。「田宮君は2ストライクから、ちょっと際どいところに行くでしょ。それで球数が増えるんで。伏見君は追い込んでもポーンとインコースで詰まらせたり、そういうリードをしてくれるから」。
 
 ファイターズは可能なら先発投手を完投させようというチーム方針だ。ましてワンサイドゲームなら、なるべく福也を最後まで行かせたい。田宮は大活躍の翌日、不本意な交代を味わったのかもしれないが、ここには飛躍のバネが隠されている。(特に勝ち試合で)スイスイ行かせたいときのリードの要諦が監督の試合後コメントに詰まっている。僕は田宮、いい宿題もらったなぁと思った。この2日間、伸びしろしか感じなかった。現時点、鎌ケ谷の「最後の代表作」だ。頑張れよ。

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