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先発1番手の理由は勝利数だけにあらず。カードメイクができる、久保康友の老獪な投球術

移籍1年目にチーム最多12勝をあげた久保康友。すでに中畑監督が来季の開幕投手に指名という報道も出た。変幻自在かつ老獪な投球術に定評はあるが、実は久保が好投した翌日も、ベイスターズ先発陣の防御率も改善される数字が出ているのだ。

2014/12/21

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カード1戦目、久保の重要な役割

 実際に今年、こんな出来事があった。9月上旬。ヤクルト戦のカード初戦で登板した久保は4年ぶりの完封勝利を記録した。

 その時、久保はインタビュアーの質問に対し、翌日投げる先発投手のためにリズムを崩しておいたという旨のコメントを出している。
 そして翌日に先発した山口俊は、無四球プロ初完封勝利を挙げ、久保の好投と狙いに見事に応えたのであった。

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 実はこのようなケースは、これだけではない。

 この表は、今年のDeNA先発投手の成績と、久保の翌日に投げた先発投手の成績、そして久保がQS※を達成した翌日に投げた先発投手の成績である。

 久保が投げた翌日というだけではそれほど差はないのだが、久保がある程度長いイニングを投げ、ある程度自分の思い通りに投げられたと思われるQS達成時の翌日には、防御率が3.89から2.55とかなり先発投手の成績が良化しているのがわかる。

 そして注目すべきは、久保QS達成時の翌日が同一カードだった例は13あるのだが、そのすべての試合で先発投手が5回を投げきり、早期KOという事態は避けられているのだ。
 これは久保の老獪な投球術の影響が翌日まで残像として残り、相手打線がアジャストするのに苦労しているからではないだろうか?

 久保の魅力は、コントロールの良さに加え、スライダー、カットボール、フォーク、チェンジアップにパームという球種の多彩さ、そして力を入れれば150キロ近くを計時するストレート、さらに球種だけでなく、投球フォームもクイックに加えてスーパークイックも交える変幻自在さにある。

 ストレートと変化球の球種間の緩急だけではなく、投球フォームでも緩急をつけ、徹底的に相手打線のリズムをずらすことに主眼が置かれているのが久保の特徴であり、長所である。
 そしてこのずらしが相手打線のリズムを崩し、単に久保が登板するゲームだけではなく、カード全体を支配していくのである。

 久保は単純に登板する試合のみをゲームメイクしているだけではない。
 カードを見通したカードメイクができる投手なのである。

※クオリティ・スタート…先発投手が6イニング以上を投げ、かつ自責点3以内に抑えた時に記録される先発投手の評価指標。今年、ニューヨーク・ヤンキースの田中将大がメジャーデビュー以来、16試合連続QS達成のメジャータイ記録を打ち立て話題になった。

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