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「代走屋」以上に価値あるスタメン起用。五十幡亮汰を我慢強く育てる新庄采配【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#251】

足のスペシャリスト・五十幡亮汰の打撃が開花しつつある。結果を出し続けレギュラーに定着することはチームにとっては1回きりの代走起用以上に価値がある。

2025/06/15 NEW

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産経新聞社



うまくいってないときも応援を

 それから絶対忘れちゃならないのは新庄ファイターズの大方針だ。走者が塁を埋めて、チャンスの場面が巡ってくる。例えば2死満塁、バッターは五十幡。打率は1割台だったりする。そんな場面、新庄剛志監督はほぼそのまま打たせたと思う。SNSはヒートアップする。「なぜ○○を代打に出さない?」「五十幡なんて自動アウト要員だろ」。僕はこの「自動アウト要員」みたいな物言いが嫌いだ。応援してるチームの選手を貶めてどうする。SNSにいるファンは大概、新庄監督より短慮だ。目の前の結果だけで文句を言う。たぶん「目の前の結果」だけで野球をやっていたら、五十幡亮汰は永遠に「代走屋」だったと思う。進藤勇也は1軍の打席なんて与えられなかったと思う。6/12ヤクルト3回戦、進藤はついにプロ初ヒットを記録した。そして、その手応えを持っていったん2軍に戻り、腕を磨くことになった(6/13登録抹消)。
 
 五十幡亮汰のような選手はファンにジレンマを与える。代走で使えば、同点や1点ビハインドの試合終盤の勝負手になる。2死であっても四球で走者が出れば、代走五十幡案件だ。盗塁でセカンドを陥れ、ワンヒットでホームに帰ってくる。ロッテ戦で終盤、和田康士朗が出てくるとドキドキじゃないか。
 
 だけど、「代走屋」は一回しか使えない。もし、五十幡に4打席あって、マルチ安打なら二回も足が使える。俊足を生かしたセンター守備を考えればもっと貢献度は高い。スタメンで使うメリットは「代走屋」の比ではない。但し、打てるようになるまで場数が要るのだ。チャンスの場面で代えられていたらそういうスケールの選手になってしまう。新庄監督はSNSで叩かれようと五十幡や進藤をそのまま打たせた。選手は成長する。選手は課題を克服し、復調する。「自動アウト要員」は主砲レイエスになる。「自動アウト要員」はしっかり叩けるようになり、斬り込み役を果たし、時には「返す役」も務める。今の五十幡を見てると嬉しくて泣けてくる。詰まったとき野手の前に落ちるのも多くなった。相手投手からしたら本当に嫌らしい選手だ。
 
 僕はできるならファンに長い目で野球を見てもらいたい。五十幡も今は好調だけど、またバッティングを見失うときも来るだろう。いいときだけチヤホヤして、あっさり見捨てないでほしい。うまくいかないときも応援してるから、会心の左中間スリーベースは感激なのだ。進藤の難しい球を拾った初ヒットが感激なのだ。僕は交流戦のハマスタに「松本剛」の応援タオルを持っていったよ。最近はマツゴーまで「自動アウト要員」呼ばわりされている。僕はうまくいってないときも応援したい。
 
 性分かもしれないけど、サヨナラ食らった6/8DeNA3回戦は「代打で好機を生かせなかった松本剛」「サヨナラ負けでベンチに戻って来る宮西尚生」を心に刻んだ。失意のときを覚えているから、いいときが輝く。それこそずっとつづき物で見てるファンの特権じゃないか。

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