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山田哲人強行復帰がもたらした変化。『下町スワローズ』終了も『東京ヤクルト』で逆転CSへ【新・燕軍戦記#30】

川端慎吾、畠山和洋、そして山田哲人といったスター選手を軒並みケガで欠いた東京スワローズにあって、ファンに夢を与えた「下町スワローズ」は、山田の復帰で終わりを告げた。ここからは「花形」も「下町」もない。選手一丸となって逆転CS進出を狙う。

2016/08/28

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山田、復帰強行は「もう野球できるもん」

 不安を抱えながらも、山田が復帰を「強行」したのはなぜか? その答えは単純明快だった。

「だってもう野球できるもん」

 いたずらっぽい笑顔で話す表情は、野球少年そのものだった。ケガや痛みがあっても、プレーできるのなら試合に出る──。思えば昨年もたびたびケガをしながらも、「野球選手には付きもの」と涼しい顔でフル出場を続けていた。

 もちろん、そこには中心選手としての自覚もある。シーズン193安打で大ブレイクした2014年は「周りも見えてなかったし、自分のことで精一杯みたいな感じだった」というが、昨年あたりからは、しばしば「自分が打たないとチームは勝てない」と口にするようになった。

「三番・二塁」で11試合ぶりにスタメン出場した24日の復帰戦。山田が初回の第1打席で1死二塁から四球を選ぶと、今季初めて五番に入った鵜久森が先制3ラン。山田不在の間は三番を打っていた西浦も、ソロ本塁打で続いた。「花形」と「下町」の融合で試合の主導権を握ったヤクルトは、前述のとおり連敗を4で止めた。

 山田自身はこの日は3打数ノーヒット、2三振に終わったものの、試合後は「久々って感じはしなかったです。見逃し三振もあったけど、(バットは)振れてたでしょ? (強い当たりの)ファウルも打てたし、全然大丈夫でしょう」と、表情も明るかった。

 翌25日の同カードでは、初回にその山田のタイムリーで先制。さらに四番のウラディミール・バレンティンが23号2ランで畳みかけると、5点ビハインドの6回には反撃の24号3ラン、7回には同点の2点タイムリーと、1人で7打点の大暴れ。試合後は「ヤマダがラインナップに戻ったことで、相手のピッチャーは自分だけじゃなく2人を警戒しないといけなくなるから、プレッシャーも分散される」と、山田復帰の効果を語った。

 この試合、7回に鵜久森の適時打で勝ち越しながら9回に追いつかれたヤクルトだったが、延長11回裏に相手投手のサヨナラ暴投で乱戦にピリオド。2カードぶりの勝ち越しで、3位・横浜DeNAとの差を2.5ゲームに縮めた。

 この時点ではまだ5位ながら、26日からは敵地・甲子園で阪神にも連勝して4位に進出。DeNAとのゲーム差は2.5のままだが、直接対決は7試合も残っており、Aクラスは十分に狙える位置にいる。

「1人入ったことで打線がこんなに変わるとはね」とは杉村繁チーフ打撃コーチの言葉だが、山田の復帰でヤクルト打線は確実に変わった。山田復帰前の4試合は計6得点だったのが、復帰後の4試合では実に25得点。この間、山田自身も打率.357とよく打っているが、バレンティンに至っては打率.385、3本塁打、11打点と凄まじい。

 その一方で、26日の阪神戦では鵜久森が先制の満塁ホームランを含む全5打点を挙げるなど、「下町スワローズ」を自称した選手たちも、それぞれの居場所をつかむために必死でアピールを続けている。ここからはもう「花形」も「下町」もない。今浪がいうように「東京ヤクルトスワローズ」として、チーム一丸でクライマックスシリーズ出場権を獲りに行く。

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