完投数トップ・金村尚真は快進撃の象徴。「投げ抹消」活用で夏を見越した投手起用【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#250】
まもなく交流戦を迎えるが、チームはケガや不調の選手を上手に入れ替え、首位に立つ。ここまでの数字を他チームと見比べると、先発陣の頑張りが目を引く。
2025/06/01
産経新聞社
先発の完投数はダントツ
まだ(2試合残ってるから)「交流戦前のデータ」が出揃ってないけれど、ファイターズがリーグダントツの数字を残しているポイントが2つある。1つはチームホームラン数(5/30夜の時点で47、2位オリックスは33)。もう1つはチーム完投数(同10、2位オリックスは4)だ。達孝太の「初完封してみたい」はチーム完投数10、同完封数9の文脈で考えるべきだろう。ファイターズのシーズン序盤戦は早い話、「ホームランが沢山出て、先発がよく頑張った」とまとめてよさそうだ。
で、このうちホームラン数の方はチーム方針で増やせるものじゃないと思う。方針で増やせるなら各チーム取り組んでいるに違いない。まぁ、MLB流の「フライボール革命」に取り組めば増えるのかもしれないが、流行は終焉してしまったしなぁ。ファイターズのホームラン増はレイエス、万波を中心にたまたま開花期の打者が揃っていたから、という以上の説明は不可能だと思う。
その点、完投数「10」は首脳陣の意向が大きい。新庄剛志監督なり、加藤武治投手コーチなりの方針あってのものだ。ちなみにチーム完投数はオリックス4、西武3、楽天1、ソフトバンク&ロッテ0(5/30夜の時点)だ。たとえば西武は「開花期の投手」が揃ってる印象だけど、ファイターズの半分にも届かない。これは単に先発陣の完投能力という話ではなく、チームの起用法の問題だ。今季、ファイターズは伊藤大海、金村尚真、加藤貴之、北山亘基、山﨑福也、達孝太、古林睿煬、細野晴希とスターターが多士済々だ。2軍で調整中だがバーヘイゲン、上原健太、根本悠楓と先発実績のある投手もいる。「投げ抹消」を使いながら、ゆったりした登板間隔で先発を回すことができる。
休養十分のスターターが(100球メドみたいな起用じゃなく)行けるとこまで行く。責任を持たせる。ファイターズの投手起用はそういうイメージだ。その起用に応えて、金村尚真4、伊藤大海2、北山亘基2、山﨑福也1、古林睿煬1の完投が実現した。なかでも金村尚真の「完投4(うち完封3)」は圧倒的だ。セでこれに匹敵するのは広島・床田寛樹の「完投4(うち完封3、もちろんセ・リーグNO.1)」だけだ。30歳、円熟の床田も素晴らしいが、24歳で伸びしろを感じさせる金村はとてつもない。明らかにファイターズの快進撃を象徴する投手といえる。これはどれだけ誉めても誉めすぎということはない。
ファイターズの投手起用はこれから交流戦が過ぎ、夏場を迎えた頃、効いてくると思うのだ。今は投手力が勝(まさ)っていて、3割残す打者は数えるほどだ。が、必ず夏場、ピッチャーはへばってくる。特にリリーフ陣の消耗が激しい。夏場以降はバッターにアドバンテージが来る。そこで打線がどう爆発するかがペナントを制するカギを握る。
先発の完投試合が多いということはそれだけリリーフが休めるということだ。先発もリリーフもなるべく無理をさせず、巡航速度をキープする。本当の勝負はシーズン後半戦、ということなんじゃないか。とにかく先発もリリーフもパンクさせないで夏場まで行こう。交流戦前の評価は100点。金村尚真は120点。
追記 6/1公示で上川畑大悟が1軍昇格、「左ハムストリングス筋損傷」で水野達稀が抹消となった。