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菊池雄星VS筒香嘉智「ストレート待ちにストレート」。“平成の新名勝負”はじまりの予感【中島大輔~この1球をクローズアップ】

結末を迎えて欲しくない試合がある。しびれるような名勝負は、いつまでも、何度も、見ていたいものだ。6月1日の西武の左腕・菊池雄星とDeNAの主砲・筒香嘉智との間で繰り広げられた対決は、まさに、そんな気持ちにさせられた名勝負だった。今回は西武対DeNAの4回表2死、3球目の場面だ。

2016/06/06

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第1打席からフルスロットルの激突

 ど真ん中に来た147kmのストレートに押されて後方へのファウルにした直後、DeNAの筒香嘉智は打席で思わず叫び声を上げた。

 一方、渾身のボールが甘いコースに行った西武・菊池雄星は、思い切り腕を振った左腕に好感触が残った。

 6月1日に行われた西武対DeNAの4回表2死、3球目の場面だ。一見すれば、甘いコースに来た剛球を筒香が捉え損ねた形である。しかし西武バッテリーにとって、その1球は意図のあるボールだった。

 平成の新名勝負――。ともに1991年生まれの二人が初めてプロの公式戦で顔を合わせた対決は、そう形容するに相応しい時間だった。これほど観る者を魅了する勝負は、なかなかお目にかかることができない。それだけでも、セリーグとパリーグが対戦する交流戦を行う意義がある。

 2回表の先頭打者として迎えた1打席目から、フルスロットルの激突だった。

 試合後に菊池が「ストレートでどこまで押せるか、ランナーがいないからこそ試せた部分はあると思う。すごく燃えました」と話せば、筒香は「力を入れてきているなって感じました」と振り返っている。

 菊池は初球からストレートを2球続け、筒香がともにフルスイングでファウル。3球目、菊池にとってこの日最速だった156kmのストレートは外角に大きく外れた。
 
 第2打席への伏線となるのが4球目、外角低めに逃げていくスライダーだ。これがボールになると、ストレートが2球続けて外、内のきわどいコースに外れる。無死から歩かせたバッテリーだが、これは問題なしとの共通認識だった。
 
 まずは、捕手の炭谷銀仁朗が振り返る。

「相手ピッチャー(石田健大)は5月の防御率が0.33でしょ? 最初から1点勝負になるのはある程度予想されている中で、長打を打たれてはいけない。あそこはシングルヒットでもOKですし、フォアボールでもOK。あとをきっちりとっていけばいい場面です」
 
 片や、菊池の見解はこうだ。

「1点勝負だと思っていたので、結果論ですけど、フォアボールでも良かったのかなと思います。今日は一発長打で決まるだろうなという気持ちもあったので」

 そう話した後、加えた一言が完璧主義者の菊池らしい。

「でも、先頭打者なので(四球は)良くないですかね」

 後から振り返れば、無死からの四球は確かに反省材料かもしれない。しかし、きわどいコースを突いて歩かせるのは問題ない場面であり、相手打者は筒香だ。何よりバッテリーにとって、ボールになったスライダーの後にストレートを2球続けたことに意味があった。

 2打席目は0対0の緊迫した投手戦で迎えた4回2死で回ってきた。初球は外角低めのスライダーがボール、2球目は内角高めに投じた152kmのストレートで空振りさせた。この球で、菊池は確信を抱いた。

「1打席目(の4球目)でも逃げるスライダーがいいコースから落ちていたんですけど、全然反応しなかったので真っすぐ狙いなんだな、と。昨日とか過去のデータを見ると、左ピッチャーのときにはスライダーをけっこう狙っていたので飛びつくかなと思ったら、全然動かなかったんですよね。そうしたら(2打席目では)2球目のインコースの真っすぐを振ってきたので、真っすぐを狙っているんだなと思いました」

 そして続けたのが、冒頭に描いた3球目のストレートだ。

 このとき、炭谷は真ん中にミットを構えた。菊池はコーナーを突くというより、コントロールは多少アバウトでも球威ある球で打者を圧倒するタイプだ。真ん中に構えてのストレート要求には、力で押してこいという意図が読み取れる。しかも、筒香はストレートを待っているとわかってのうえだ。

 その球がミットを構えた通りの真ん中に来て、ファウルで追い込んだ。

「コースは甘かったかもしれないけど、そんなん言ってたらキリがないです。雄星がそれを上回るだけの真っすぐを投げていたということです」
 
 炭谷が意図通りに追い込んだ球を振り返った一方、コースは甘かったものの力で押し込んだ菊池は、「OKのボールです」と話した。ここでもバッテリーの認識は一致している。

 対して、試合後に「仕留められたボール?」と聞かれた筒香は、こう答えた。

「そうっすね。(甘い)コースっていうより、自分で打てるって感じました。それをミスショットした、そんな感じです」

 そうした思惑が交差した3球目の後、1ボール、2ストライクから外角低めに2球続けたストレートがいずれもボールになると、フルカウントからバッテリーは勝負球にスライダーを選択する。真ん中低めに変化していく球に対し、タイミングを外された筒香のバットは空を切った。

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shiro