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「うちのヒロミが開幕投手」。伊藤大海、エースとしての飛躍を!【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#221】

3月29日、開幕投手を務めるのは伊藤大海だ。ルーキーイヤーから先発ローテーションの一角として活躍してきたが、2024年はいよいよ柱として働きが求められる。

2024/03/17

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産経新聞社



やった者にしか価値はわからない

 僕は現役時代の岩本勉氏に開幕投手を務める心得を尋ねたことがある。ガンちゃんは1998、99年、2年連続開幕戦完封勝利を達成したファイターズの元エースだ。「普通の一試合とは気持ちのつくり方からぜんぜん違う」ということだった。緊張感もマックスだし、だからこそ事前のシミュレーションも念入りになるという。実はガンちゃんは96年、雨天中止の影響で本来の開幕投手、西崎幸広の登板が流れ、たまたまというか結果的にというか「(シーズンの最初に先発した投手という意味での)開幕投手」を務めたことがある。それはあくまでたまたまであり、結果的にであったが、投手岩本勉のジャンピングボードとなった。初のシーズン2ケタ勝利をモノにしたのだ。ガンちゃんはその後、「たまたま」「結果的に」を必然のものにするべく努力した。その結果が2年連続開幕戦完封勝利だったと思っている。
 
 伊藤大海も飛躍しないかなぁ。そりゃ彼は1年目から2ケタ勝利していて、数字的にこれ以上の飛躍があるだろうかというところだ。だけど、「開幕投手」の意味は重い。たぶん数々の大舞台を踏んできた大海も、去年新庄監督から指名を受け、思った以上のプレッシャーを感じたはずだ。指名の瞬間からずーっと3月下旬まで緊張が続くのだ。そして元エース、ガンちゃんはその緊張感には見合うだけの価値があると言う。やった者にしかわからないものだろう。
 
 伊藤大海は去年、WBCを経験してちょっと燃え尽き症候群のような状態に陥った。ていうか、WBC後の選手らが大海に限らず、後遺症めいたものを抱える。疲れもあるだろう。調整が難しいともいえる。だけど、いちばんは心の燃料が払底してしまうんじゃないかと思う。「世界一」の緊張感、アドレナリンを味わったら、いったんバケーションを取るなどしてリセットしないと気持ちがつくりにくいだろう。
 
 だから大海はビリビリしびれるマウンドが向いている。開幕投手が向いている。当コラムはそう唱えたい。3月29日、ZOZOマリンのチケットを取った。伊藤大海の晴れ姿を楽しみにしている。それまで僕もずーっと緊張して日を送るつもりだ。ファイターズの新しい開幕投手をこの目で見るのだ。

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