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田中正義獲得にみる球団の狙い――モデルケースは杉浦稔大にあり【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#190】

ファイターズはホークスへFA移籍した近藤健介の人的補償として、田中正義を獲得した。2016年ドラフト会議で1位指名をしたもののクジで外し、球団にとっては7年越しとなるが、プロ入り後の実績は十分ではなく肩痛のリスクもある。それでも田中を獲得した理由はどこにあるのか。

2023/01/12

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産経新聞社



7年越しの念願が叶う

 田中正義に決まった。近藤健介FA移籍の人的補償をめぐって、メディアでも(ファンによるSNSの書き込みでも)昨年暮れから「候補者」が何人も取り沙汰され、なかなか興味深いことであった。「宝の山」のソフトバンクのロースターから一体、誰が指名されるのか。プロテクトリストから漏れた有力選手は誰なのか。ソフトバンク側のリストは12月中に届けられ、ファイターズの正式決定は年明けのスタッフ会議を経て、という大筋だった。
 
 が、ヒントが小出しに報じられた。最初は8日、稲葉GMだ。「ある程度はしぼっている。基本的には投手と考えている」。翌9日は新庄監督だ。「『この選手出すの?』っていう選手が投手3人、野手1人いた。(ファイターズは)野手はけっこう整っている。やっぱり投手かな」「球のスピードは彼なんだけど、身体の状態がアレだからこの選手かなっていうのも、迷いましたよ。ビデオはもうすり切れた。大学時代から見たから。その大学時代に復活できるのかどうかっていう見極めもね……」「最初の文字が『た』かな?」
 
 僕はミルクボーイの漫才を連想した。稲葉GMの「基本的には投手」で、「ほな、上林ちゃうかー」。新庄監督の「球のスピード」「大学時代に活躍」「最初の字が『た』」で、「それやったら田中正義やろ。ソフトバンクの『た』のつく投手は武田翔太、高橋純平、高橋礼、田中正義とおるけどやな、大学出は高橋礼、田中正義しかおらんのよ。そんで高橋礼は大学時代、特に3年生以降はそれほどの活躍しとらんからね。大学時代に活躍といったら、何といってもNPB選抜相手に7者連続三振でひとり気を吐いた田中正義しかおらへんよ。それはジャスティス、田中正義で決まりよ!」。心のなかでミルクボーイ内海がそう言っていた。幸いなことに心のミルクボーイ駒場は「そやけどオカンが言うにはやな、その投手はアンダースローらしいねんな」とまぜっ返さなかった。
 
 2016年ソフトバンクのドラ1(5球団競合)、田中正義がファイターズにやって来る。そのドラフトでクジを外しているから、7年越しの念願成就だ。150キロ台の速球で鳴らした右腕は、しかし、プロ生活7年で34試合登板(36イニング)、0勝1敗2ホールド、防御率4.25の不面目であった。球威はホークス投手陣でも指折りだったが、ケガがちで満足に働けたシーズンがない。
 
 例えば同じように学生時代、華の球歴を過ごし、プロで苦労した斎藤佑樹と比べても田中の「0勝」は際立っている。ファイターズは近藤の人的補償で「ホークスの不良債権」を引き取ったのだろうか。球団の「ブランド買い」「有名人好き」はここに極まったのだろうか。
 
 というところが田中正義獲得の面白いところだ。以下、あれこれ考察したい。

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