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森本稀哲、待望の現場復帰! 万波と新米コーチによる化学反応を期待【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#185】

ファイターズOBである森本稀哲氏が来季より古巣の1軍守備走塁コーチに就任する。現役時代からファンに絶大な支持を受けていた”ひちょり”が今度は指導者として選手の力をどのように引き出していくのか楽しみだ。

2022/10/30

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産経新聞社



熱量が選手の成長を促す

 森本稀哲氏の1軍守備走塁コーチ就任が決まった。同時に元侍ジャパンの建山義紀1軍投手コーチ、元阪神の八木裕1軍打撃コーチ就任も発表になり、もしかしたらそっちのほうが世間的なインパクトは強いのかもしれないが、僕にとってはこのオフ最大のニュースだ。何といってもひちょりとは家族ぐるみのつきあいだ。温泉旅行に行ったり、花火大会でご一緒したり、こんな至近距離でつき合ったご家族はない。入団からずっと見てきたから何となく親戚のおじさんみたいな感覚だ。
 
 だから特別の感慨がある。あのルーキーイヤー、肩を壊して鎌ヶ谷でバット下げだけやってたひょろっとした高卒内野手(!)が、ゴールデングラブ賞をもらう外野手になって、とうとうコーチ就任か。へぇ、あいつがファイターズのコーチにねぇ。母さん、このスポーツ新聞、神棚に上げといてくれ。べらんめえ、今日は仕事は止めだ、酒だ酒だ、酒持って来い!。と実際には下戸なのだが、思うのだ。
 
 コーチ就任の記事を見て、ソッコー本人とお父さんのLINEにメッセージを送る。
「現場復帰おめでとうございます。この日が来るのを待ってた!!」
 実際、僕は顔を合わせるたび「ユニフォーム着る気はないの?」「現場は戻らないの?」とほぼ毎回聞いてきた。ひちょりは僕のことを現場復帰のことばかり言う下町のおじさんと考えていただろう。
 
 ひちょりの野球解説はとてもわかりやすいし、STVラジオでレギュラー番組(『ひちょりのWA!!』)を持たせてもらうくらいタレント性がある。だけど、身体が動くうちは現場をやったほうがいいと思った。ファイターズなら最高だが、ベイスターズやライオンズでもいいと思った。コーチ経験はいつでもできるわけじゃない。特に「新米コーチ」は一回性のものだ。その「新米コーチ」の経験が野球人としての一生を左右する、と僕はにらんでいる。
 
 これは初めて子を持つお父さん、お母さんをイメージするといいんじゃないか。まぁ、新任の教師でもいいが、身近なので親御さんを例に出そう。僕は三人兄妹の長男(「一朗」というくらいだ)で、母がよく言うのだが、「親のなりたてだからあらゆることが未経験、不安だらけだった」そうだ。子ども側から見ると親は生まれたときから親をやってるから、もうずっと半生が親だったんだろうと思うが、もちろん娘だったし、その前は子どもだったのだ。で、「一朗」が生まれて、何もわからないなか手探り、体当たりで親をやってみる。初めてだから失敗もある。だけどいっしょうけんめいだ。
 
 それが貴重なのだ。母は「一朗のときがいちばん思い出があるよ。3人目になると、慣れてるからもう要領がいいし、年を取った分、体力も落ちてるからあんなに頑張れない」と言う。
 
 僕はプロ野球のコーチも似たようなことがあると思っている。そりゃベテランのコーチは引き出しも多くて、長く球界にいるのだから優秀だ。だけど、「新米コーチ」の熱量、エネルギーはハンパない。
 
 これはプロ野球の出会いのドラマでもあるということだ。「新米コーチ」がどんな選手に出会うか。選手がどんなコーチに出会うか。ひちょりの世代にとっては渡辺浩司コーチがそんな存在だったと思う。そのとき、その人と出会うのは青春と同じ一回性のものなのだ。僕はひちょりに現場復帰して、将来あるワカゾーと出会ってほしかった。

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