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【ドラ1の知られざる苦悩】元ダイエー大越基(4)想定外の1位指名に「まずいことになったと」

2022/10/17

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産経新聞社



「お前、日本に帰っても暇やろ」

 92年3月、大越は大学を中退し、アメリカに渡ることにした。89年、団野村がサリナス・スパーズというカリフォルニアリーグの球団のオーナーになっていた。後に団は野茂英雄や伊良部秀輝のメジャーリーグ移籍で代理人として名前を知られることになる。
 
 カリフォルニアリーグはメジャーリーグのヒエラルキーの中ではA-リーグに相当した。サリナス・スパーズのレベルはそれほど高くない。その中でも約2年間の空白の期間により、躯がすっかり鈍っていることを大越は痛感していた。
 
「3イニング投げたらすぐに筋肉痛。次の日投げられない。高校のとき75キロあった体重が68キロぐらいになっていました。サリナスでは野球で遊びながら筋肉をつけていくという感じでした」
 
 カリフォルニアリーグのシーズンは短く、7月末には終わってしまう。大越に運があったのは、スパーズが日本のプロ野球球団、ダイエーホークスとヤクルトスワローズから選手、指導者を受け入れていたことだ。
 

 
 ダイエーから来ていたハイディ古賀が大越にこう声を掛けた。
 
「お前、日本に帰っても暇やろ」
 
 ボルチモア・オリオールズの教育リーグに参加してみないかと言うのだ。
 
「フロリダのチームに入れられました。日本人は一人だけです。モーテルに外国人と一緒に住みながら、球場に行ってました。本当に楽しかった。フロリダは暖かく、投げていたら調子が良くなった。それで色んな教育リーグを視察しているメジャーリーグのスカウトからマイナー契約しないかと誘われた。でもぼくは英語が分からないし、契約書も読めない。だからサインはしませんでした」

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