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若きチームが一気に成長した王者ヤクルトとの3試合。「野球の応用問題」で経験値高める【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#174】

セ・パ交流戦がスタートした。ファイターズの開幕カードはいきなり昨年度日本一のスワローズ。経験の浅い若い選手たちが王者に対して真っ向勝負で挑んだ3試合、昨年の日本シリーズを彷彿させる内容の濃い試合になった。

2022/05/29

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接戦の末にサヨナラ負け―第1戦

 巨人1回戦(5月27日、札幌ドーム)で完投勝利を飾ったエース、上沢直之はこうコメントした。
 
「あの試合を見て何も思わないようでは、男ではないと思いました」
 
 2022年セ・パ交流戦の開幕カードとなったヤクルト3連戦(神宮球場)のことだ。僕はサイスニードと加藤貴之の先発試合だった第1戦を内野席で観戦し、2、3戦を動画配信で見た。新庄ビッグボスが「ガッツポーズしすぎて肩痛い。ヤバっ」とコメントしていたが、このシリーズはベンチも選手らも心底疲れたと思う。ファンもくたくたになった。くたくたになって野球の深さ、面白さに魅了された。
 
 ファイターズにツキがあった。交流戦の初っ端に東京ヤクルトスワローズと当たれたことだ。言うまでもなく昨シーズンのチャンピオンチームだ。それは単に去年の戦績を言ってるのではない。走れて、守れて、大技小技がきいて、戦意高くまとまっていて、チームスタイルに誇りを持っている、ざっくりした物言いが許されるなら「今、いちばん野球ができるチーム」だからだ。セで最初に胸を借りるのにふさわしい。
 
 ファイターズのチーム事情的にもちょうどよかった。開幕から試行錯誤を繰り返し、やっとチームの形ができてきたところだ。主力の近藤健介をケガで欠いているが、松本剛が絶好調をキープしている。清宮、野村、万波のクリンナップも人気が出てきた。この交流戦は若いチームの経験値を高める絶好の機会だ。「経験値を高める」というのは早い話、揉んでもらうのだ。頭も身体もくたくたになるような「野球の応用問題」に出会う。それはプレーオフや日本シリーズのような密度の濃い試合でなくてはならない。
 
 思い出してくれ、去年の日本シリーズ。久々に「ソフバン4連勝」みたいなパターンじゃなく、両チームの魅力が全部出た「ダンスを踊った日本シリーズ」を。あれを見てめちゃくちゃうらやましくなかったか。オリックスの選手が短期決戦のなかで成長していくんだ。あぁ、うちの選手にもあれを体験させてやりたいと思わなかったか。
 
 それが5月に実現したんだ。ヤクルトは僕に言わせればダンスの名手だ。「今、いちばん野球ができるチーム」は挑戦者を受け止め、ダンスを踊ってくれる。但し、条件があって、(ヤクルトはもちろんだけど)こっちも守備がいいこと。狭い神宮で投手が逃げないこと。チームが気持ちを出すこと、本気でかかること。まとめるとチャレンジすることだ。
 
 神宮の内野席で見た第1戦、両チームの好守に試合が締まり、いつしか「名勝負」という名のダンスが始まっていた。ファイターズの虎の子1点リードは、8回裏、ヤクルト・内山壮真の同点ホームランでけし飛んでいた。内山はそれがプロ初ホームランだ。もう、「名勝負」が泣かせにかかっている。大団円は延長11回、村上宗隆のサヨナラ2ランホームラン。村上はそこまでノーヒットだった。被弾しマウンドを下がるクローザー、北山亘基を新庄ビッグボスがいたわるように出迎えたシーンが皆の心に残った。この時点で北山はシリーズの主人公になった。主人公とは何か?
 
 王者に挑む者だ。
 

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