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「こういう状況でプレーしたかった」マジック点灯かけ、巨人との『決戦』に闘志燃やすバレンティン【新・燕軍戦記#13】

決戦の時が来た。24日にセリーグ一番乗りでクライマックスシリーズ進出を決めたばかりの東京ヤクルトスワローズは、今日26日から敵地・東京ドームに乗り込み、2位巨人との直接対決に臨む。結果しだいでは14年ぶりの『セ界制覇』へのマジックナンバーが点灯する大事な2連戦に向け、闘志を燃やしているのがおよそ5カ月ぶりに戦列復帰したウラディミール・バレンティンである。

2015/09/26

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「ホームランは気にしていない。チームが勝てばそれでいい」

「みんなと離れていて寂しかったし、早くチームに戻りたかった」

 昨秋に受けた左アキレス腱手術からの復帰戦となった4月24日の巨人戦(神宮)で左太ももに肉離れを起こし、再び戦列を離れてからおよそ5カ月。米国での手術とリハビリ、そして二軍での調整を経て、久しぶりに本拠地の神宮球場に帰ってきたバレンティンは、離脱中に抱いていたチームへの思いをそう口にした。

 今季2度目の復帰戦となった9月18日の巨人戦。

 五番・左翼でスタメンに名を連ねると、6回にはライトスタンドへあいさつ代わりのホームランをたたき込んだ。来日した2011年から3年連続でセリーグ本塁打王に輝き、2013年にはシーズン60本塁打で日本記録を59年ぶりに塗り替えた「キング」が、約1年ぶりに放ったアーチ。しかし──。

「ホームラン? 気にしてないよ。オレが意識しているのは塁に出ることと、ランナーがいればかえすこと。それだけだ。別にヒーローになりたいとも思ってない。誰が打ってもチームが勝てば、それでいいんだ」

 ずいぶんと優等生な発言にも聞こえるが、勝利への強いこだわりは来日当初から変わらない。豪快なアーチを架けても、チームが負けると口が重くなることもしばしば。負けが込んでくると、モチベーションがガクンと下がるのは傍目にもわかる。

 忘れられないのは、2012年のクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ最終戦のプレイボールを数時間後に控え、ナゴヤドームの三塁側ダグアウトでふと漏らした言葉だ。

「明後日は娘の誕生日なんだ。明日、日本を発てば自宅(米国フロリダ州)で一緒に祝える。でも……」

 その2日後の10月17日は、1年前に生まれたばかりの愛娘ミアちゃんの誕生日。ヤクルトがこの試合に敗れてCS敗退が決まり、翌日に機上の人となれば、時差の関係で現地時間の17日には自宅で待つ夫人と娘のもとにたどり着く。だが、バレンティンはそこで語気を強めた。

「オレは勝ちたいんだよ。今日の試合に勝って、東京ドーム(のCSファイナルステージ)でジャイアンツと戦いたい。娘の誕生日はチャンピオンになってから祝えばいい」

 目に入れても痛くないほどかわいがっていた娘の誕生日よりも、「チャンピオン」にこだわった。ところがそのCSファーストステージ最終戦、ヤクルトは終盤までリードしながら中日に逆転負けを喫し、リーグ3位からの“下剋上”の夢はついえた。試合後、グラウンドを去るバレンティンの大きな背中は、泣いているようにも見えた。後ろから声をかけたが、その背中はまったく反応することなく迎えのバスへと消えていった。そんなことは後にも先にも初めてだった。

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