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2年連続70試合登板を達成。トミー・ジョン手術に失敗したファレル監督が、田澤純一を成功へ導く

トミー・ジョン手術を回避し「PRP」と呼ばれる注射による治療法とリハビリによって復帰を果たした田中将大。その一方、19日のオリオールズ戦で、2年連続70試合登板を果たしたレッドソックス・田沢純一はトミー・ジョン手術を受けた選手の一人だ。その田沢を成功へ導いたのは、現役時代にトミー・ジョン手術を受けたものの、肘が完治せず引退を余儀なくされたファレル監督だった。

2014/09/22

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トミー・ジョン手術は、魔法の術式ではない

 こう書くと、いいことずくめのようなトミー・ジョン手術だが、もちろん魔法の術式などこの世には存在しない。投げられない苦しみは、投手という職業人にとって地獄以外の何ものでもない。
 
 成功率は9割近くとされるが、1割は失敗して復帰できない者もいる。そして、復帰を焦れば→再手術→再び1年以上のリハビリ、という負のスパイラルに陥りかねない。
 
 今年5月、手術から1年を経ない364日で復帰したブレーブスのフロイドは、患部周辺の強化が到らず、復帰後9試合で肘の骨折で再離脱した。
 
 リハビリはわずか数メートルのキャッチボールから始まる。1日でも早く投げたい気持ち。同じ時期にメスを入れたはずのライバルが、自分よりも先に進んでいることへの焦り。それらの葛藤と戦い、己を律し、目標を見失わない強さが求められる。
 
 トミー・ジョン手術の全治は、数年前までは10~12カ月とされたが、今ではメジャー復帰には1年半という見方が主流。手術を受ける年代も、ベテランから若手にあらためられた。
 
 田澤は10年4月に手術を受け、739日ぶりとなる11年9月13日にメジャー復帰を果たしている。本格的にメジャーで投げ始めたのは、手術から丸2年以上を経過した12年シーズンからだ。
 もちろん、本人には焦る気持ちがあっただろう。1日も早く、メジャーのマウンドに戻りたかったに違いない。しかし、そこを焦られずじっくり待てるレッドソックス投手スタッフの陣容があったのも事実だろう。
 
 昨季5月には一時的にクローザーに任命され、この2年間セットアッパーとして盤石の地位を築いた。そこまで導いたのは、入団当時投手コーチで、現在は指揮を執るジョン・ファレル監督。
 
 田澤も深く感謝するこの指揮官は、実は現役時代に二度のトミー・ジョン手術の末に肘が完治せず、現役引退に追い込まれた経歴を持つ。
 
 何とも皮肉な巡り合わせであり、やはり万能薬ではない。
 
 手術から完全復活した田澤の取り組みと、メジャー球団の支援態勢は称賛されこそすれ、手術そのものが支持される考えは間違っていると言わざるを得ない。 

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