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「21億を蹴って4億へ」は見当たらない米メディアでの黒田博樹の復帰報道【豊浦彰太郎のMLB on the Web】

黒田の広島復帰についての現地報道は、彼の選手としての優秀さやFA市場とヤンキースの先発陣編成への影響などに関するものが中心だ。「高額オファーを蹴って古巣へ」という情緒的なものは見当たらない。

2014/12/28

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ドジャース時代の報道でも、日米で同様の違いが

『CBSスポーツ』は、黒田が不在となるヤンキースの苦しさを報じている。

Kuroda’s loss means that the already suspect rotation is even more vulnerable.
黒田の帰国が決まったことにより、ヤンキースのもともと不安だらけのローテーションは一層苦しいものになった。

 共同通信は日本からの情報として、黒田の年俸と広島での背番号について報じている。

The reports say Kuroda, who turns 40 in February, has signed a one year contract worth $3.3 million. ・・・The Japanese broadcaster NHK and other reports said Saturday that Kuroda will wear No. 15, the same number he wore when he last pitched for the Carp. Hiroshima kept the number open for him during his time in the major leagues, where he wore 18.
2月に40歳になる黒田は1年330万ドル(約4億円)で契約したようだ。(中略)NHKや他のメディアによる土曜日の報道によると、黒田の背番号はカープに在籍していた頃の15となる予定であり、広島はこの番号を彼が18を背負っていたメジャー在籍時に誰にも与えなかったようだ。

 やはり、感動物語としてのニュースを見つけることはできなかった。
 米球界に影響のある側面からの報道に留まっている。理由としては、「パドレスが1800万ドル(約21億6000万円)、ドジャースが1600万ドル(約19億2000万円)のオファー」という噂自体がほとんど報じられていないため、「21億を蹴って4億」というストーリー自体が成立しにくいことが挙げられるだろう。

 筆者が調べた限りでは、現地のメディアでパドレスやドジャースのオファーを報じているのは、日本からの情報を伝えるパドレスのファンサイト『Friars on Base』のみだ。ちなみに、パドレスはすでに来季の先発ローテーション5人の編成を終えている。パドレスが黒田に契約をオファーしていたとすると、それは現在の5人の中のだれかをトレードに出し、弱点とされる遊撃手の獲得を目指していたのか、またはもっと早い段階でのオファーだったということなのだろう。

 黒田に関する日米の報道の温度差に関しては、同様なことが数年前にもあった。2011年シーズン中のこと。低迷するドジャースにあって孤軍奮闘していた黒田に対しては、優勝争いの最中に在る他球団からトレードのオファーが殺到した。ところが黒田は契約条件に盛り込まれていたトレード拒否条項を行使し、これらを断った。他球団でプレーオフに出場する可能性を追い求めるよりも、不振のドジャースに残ることを選んだのだ。

 日本では「貫いたドジャース愛」と、感動秘話としての報道が目立ったが、アメリカでは「なぜ、せっかくのチャンスを見送るのか」という論調すらあった。同じ事象を捉えても、伝えるエッセンスは同じではないのだ。

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