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下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル#6 なぜこの高校が甲子園に出られたのか?

2018年夏の甲子園に初出場した三重県立白山高校。10年連続県大会初戦敗退の弱小校。「リアル・ルーキーズ」のキャッチフレーズ……。そんな白山高校がなぜ甲子園に出場できたのか。 3/7発売「菊地選手」渾身の一作「下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル」からあとがきを公開する。

2019/03/07

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菊地高弘

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なぜこの高校が甲子園に出られたのか?

 白山高校の甲子園出場の報を聞いた瞬間、私は「なぜこの高校が甲子園に出られたのか?」という単純な興味を抑えきれなかった。三重大会決勝戦から5日後の7月30日、私は初めて名松線に乗り、白山高校へと足を運んだ。どんな高校なのか、この目で確かめてみたかった。
 
 霧が吹く小高い山々、ささやかに流れる農業用水路、ひと気のない小路。街道を走る車以外には誰にもすれ違うことなく、高校に到着する。校門をまたぐと、左手の校舎に「祝 甲子園出場 白山高校」という大きな垂れ幕が下がっていた。強風に飛ばされることを警戒してか、ところどころ紐で強く縛られているため、垂れ幕を横から見るとガタガタとぎこちない段ができていた。いかにも不自然な垂れ幕に、白山高校の快挙に対する不慣れぶりが伝わってきた。
 
甲子園メンバーは三重県庁での祝典に出席するため、早々に練習を切り上げた。前日の大雨の影響でグラウンドは使用できず、残ったメンバーは体育館で室内練習に励んだ。翌日に校内で開かれる野球部の壮行会に向けて並べられたパイプ椅子をよけるように、30人以上のメンバーがキャッチボールをしたり、トレーニングに取り組む。「そこまでして練習するか?」という多少の違和感はあったものの、どこにでもあるような公立高校のごく普通の野球部に見えた。
 
 ところが練習の合間、ある1年生部員が池山桂太コーチのもとに近づき、その筋肉で盛り上がった胸をツンツンと突いた。池山コーチはその行為を軽くいなし、部員と談笑する。強豪野球部なら戦慄が走りそうな「指導者イジリ」に驚いていると、池山コーチは「白山では当たり前の光景です」と言った。当日エスコートしてくれた諸木康真コーチも「白山では『これ以上やったら怒る』という許容範囲を広げないと、やっていけないんです」と苦笑した。

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