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「やればできる」済美が校歌を体現 タイブレーク劇的満塁弾の矢野「頭が真っ白」【全国高校野球】

2018/08/12

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Kana Yamagishi



<第8日 第3試合 2回戦 ○済美13×―11星稜●>
 
 第100回全国高校野球選手権記念大会は12日、阪神甲子園球場で第8日を迎え、第3試合では済美(愛媛)が星稜(石川)をタイブレークの末に逆転サヨナラ満塁本塁打で劇的勝利を収めた。
 
 開幕戦に勝利して2回戦に臨んだ星稜は、初回に5得点を挙げて試合の主導権を握る。しかし、済美は1-7と6点を追う8回に猛攻を見せた。星稜の4番手・竹谷から無死一、二塁のチャンスを作り、中井雄也(3年)が左前タイムリー安打を放って1点を返すと、主将の池内優一(3年)もタイムリー安打。さらに、6-7と1点差となって迎えた2死一、三塁の場面で政吉完哉(3年)がレフトポール際へ3ラン本塁打を放ち、この回8得点。済美が9-7と試合をひっくり返した。
 
 この試合初めて追う立場になった星稜は、1死から連続安打で一、二塁とすると、竹谷が中前タイムリー安打で1点差。さらに鯰田が左前へポトリと落ちるタイムリー安打を放って9-9の同点に追い付いた。
 
 試合はそのまま今大会4試合目となる延長戦へ。そして延長12回でも9-9のまま決着が付かず、今大会2試合目のタイブレークに突入した。無死一、二塁で始まる延長13回、済美は、河井陽紀(3年)の内野ゴロの1点、佐々井光希(3年)もスクイズを成功させて11-9と勝ち越しに成功した。
 
 対する済美は、星稜6番手の寺沢孝多(2年)に対して先頭の政吉がサードへセーフティーバントを決め内野安打。無死満塁と絶好のチャンスを作る。ここで矢野功一郎(3年)がカウント1-2からの6球目を捉えると、打球は大きな放物線を描き、ライトポールに当たる満塁本塁打となった。
 
 済美は、先発の山口直哉(3年)の延長13回184球の熱投が実り、最後は「サヨナラ満塁本塁打」という甲子園史上2人目となる劇的な一発で13-11で勝利。校歌の通り「やればできるは魔法の合言葉」を体現した。一方で、敗れた星稜ナインはしばらく呆然とした後に整列。大観衆の拍手が両チームの健闘を包む中、ナインたちは最後の挨拶を行った。
 
 試合後、済美の中矢太監督は「苦しい試合になると想像はしていたが、こんな試合になるとは…びっくりしている」と話し、最後のサヨナラ本塁打のシーンについては「風もあってポールを巻くような形で入ったのかなと思う」とコメント。インタビュアーに試合のポイントを聞かれた指揮官だったが、笑いながら「全てがポイントというか、自分はとにかく『さあ行こう、さあ行こう』ということぐらいしか言っていない。諦めずに攻撃をしようということで…どこがポイント…どこですかね」と自身でもまだ信じられない劇的な勝ち方を表現できない様子だった。

 一時は6点ビハインドの展開だったが『諦めずにとにかく1点と辛抱強くランナーを溜めて攻撃をしよう』と選手たちに話したといい、その言葉通りに「上手く繋がって良かった」と振り返った。また、完投した先発の山口直哉について聞かれると「スタミナはある選手だが、持ち直して投げてくれたと思う」と称え「(途中右足を気にする様子は)死球が当たったり、(熱中症対策で)水分を摂りながらも心配はしていたが、最後までよく投げてくれたと思う」と安堵した様子。
 
 そして、満塁本塁打を放った矢野は「延長になったので、今はホッとしている。(本塁打の)感触は正直ない。でも入って良かった。今も頭が真っ白で何も考えられない。山口直哉が抑えてくれていたので、何とかしたかった。打ててホッとしている」と話し、汗をたくさんかきながら終始安堵の表情を見せていた。
 
 勝った済美の次戦3回戦は、大会第12日の第3試合。相手は慶応(北神奈川)と高知商(高知)の勝者となっている。