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最新トレンドはトランシーバー!? 全日本優勝校の驚きの練習法とは【中学野球部の教科書】

2022/03/29

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中学野球 神戸市立兵庫中学校

 2018年夏、横浜スタジアムで開催された全日本少年軟式野球大会で初出場初優勝を成し遂げた神戸市立兵庫中。就任6年目の石川勇介先生の指導のもと、地域の子どもたちで掴んだ日本一の栄光だった。どのような指導で選手を育てているのか。3月11日に発売した『中学野球部の教科書 育成年代の「技術と心」を育む』より、本編を一部抜粋して公開する。

 

 

練習試合でトランシーバーを活用

 短い練習時間の中で、いかにして技術を伸ばしていくか。
 
「いろんなことをやるよりも、ひとつのことに特化したほうが伸びていく」との考えのもと、バッティングに力を入れる。練習の8~9割はバッティング。週末の半日練習のときは、午前中いっぱい打ちまくって、練習が終わることも珍しくない。守備練習はまったくやらないわけではなく、1日10分程度と決めている。
 
「守備が苦手な選手が多いですが、『苦手なことでも、1日10分でいいから毎日積み重ねていこう』という話をしています。長くやっていたら、余計にイヤになると思うので」
 
 実戦は、週末の練習試合が中心になるが、ガイドラインとコロナ禍によって試合数は激減している。数年前までは年間130試合を超えることもあったが、今の時代にはなかなか難しいことだろう。こうなってくると、1試合の価値を高めていく必要がある。

 兵庫中では、学びを深めるためにさまざまな取り組みをしている。そのひとつが、トランシーバーの活用だ。守備のときも攻撃のときも、グラウンドにいる全選手がイヤホンを着けて、石川先生の呟きに耳を傾ける。
 
「たとえば、相手の監督から『逆方向に打っていけ!』という指示が飛んだとします。今のうちの左腕エースは、右バッターの外のツーシームを武器にしています。それを、まだ力がない右バッターが逆方向に打とうとすると、ライト線にフライが上がることが多い。前に泳いで打ったときには、三塁側にゴロが飛ぶ。そういう話を事前にしているので、『相手が『逆方向』って言うたの聞こえたか? 一塁後ろのカンチャン(ポテンヒット)をケアしよう』とトランシーバーを通して伝えます」
 
「教え過ぎでは?」「選手の考える力が奪われるのでは?」と感じる人もいるかもしれないが、石川先生の考えは「0から1は生まれない」。知識や理論を先に伝えて、1に引き上げた状態にしておけば、選手だけで2にも3にも膨らませていくことができる。

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