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さよならだけど、さよならじゃない――野球人・成瀬善久に贈る言葉

初勝利を挙げた06年から、実に9年間にもわたってマリーンズを支え続けてきたエース左腕・成瀬善久のFA退団&スワローズ入りが正式に発表されて、10日あまり。エースという大黒柱を失ったチームは、来たるゴールデンイヤーをどう戦うべきなのか──。騒動の勃発以降、ファンの胸中をずっとヤキモキさせてきた一連の成瀬問題がようやくの決着を見たところで、あらためてこの〝事件〟を振りかえりたい。

2014/12/04

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選手にとってのFAは実績を残してきた証

 なんだかんだで「なんとかニャルセ」と言ってくれるはず──。そんな僕らの淡い期待は、ヤクルト球団から正式にアナウンスされた「成瀬獲得」の報をもって、儚くも消え去った。

 実際のところ、13勝を挙げて日本一にも貢献した2010年から今シーズンまでの5年間は、見事なまでに10勝10敗ペース(50勝49敗)と、お世辞にも〝エース〟と呼べるほどの成績ではなかった彼が、「勝ちたい、優勝したいという自分の思いと、(球団の考えに)ちょっとズレがあった」とコメントしたことには、「いやいや、それはあんたがもうちょい勝ってくれてりゃ、よかっただけのことでは……」と思わないでもなかったし、そこに反感を抱くファンが少なからずいることも無理からぬところではあるだろう。

 だが、そうしたファン心理はともかくとして、彼がプロ野球選手に与えられた正当な権利であるFA権を行使したこと自体は、なんら責められるべきことではないはずだし、一般社会にあってはすでに〝転職=スキルアップ〟という価値観が浸透しつつあるこのご時世に、野球選手だけが一つの会社(球団)に〝一筋〟でなければならない、というのも酷な話。むしろそれが、相応の実績を残してきた一握りの選手にしか与えられない特権であることを考えれば、「よく頑張ったね」と褒められてしかるべきことなのだ。

 そもそも、どれほどの超一流プレイヤーであっても、現役でいられる時間はせいぜい20年がいいところ。プロ野球選手全体の平均では、選手寿命約9年。引退年齢29歳というのが現実でもある。だとすれば、今季でちょうど実動9年、29歳を迎えた彼にとっても、このオフこそが将来を見据えた大きな決断をするべきターニングポイントだったことは想像に難くない。

 その時機を逸したがために、どこからも声がかからず一時は宙ぶらりん状態にもなった藤井秀悟(ヤクルトから日本ハム→巨人→DeNAを経て、今季で引退)のような例もあることを思えば、向こうから求められて、しかもよりよい条件での移籍を実現させた彼を、ヒナの巣立ちを見守る親鳥よろしく、「こんなに立派になって……」と温かく送りだしてやるのも、僕らの務め。まだ彼が10代のド新人だった頃から声援を送り続け、ともに戦ってきた僕らにしかできないこと、と言えるだろう。

 もちろん、先に引退を発表した里崎智也のように、「チームに骨を埋める」という選択をした選手のほうが、ファンからはより愛されることは間違いないし、当の成瀬本人もそれは痛いほどわかっていたに違いない。しかし、だとすればなおさら、たとえ10勝10敗でもエース扱いしてくれるマリーンズでの〝安息〟を捨てて、移籍というイバラの道を選んだ彼の覚悟には、素直に敬意を評したいし、エールを贈りたいと思うのだ。

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