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大打者・稲葉篤紀を作り上げた”全力疾走”――ファイターズに受け継がれるべき精神

10月5日(日)の東北楽天ゴールデンイーグルス戦は、ファイターズの今季レギュラーシーズン最終戦となる。この試合では今季限りの引退を発表した、稲葉篤紀の引退セレモニーなどメモリアルイベントが開催される。過去5人の監督に仕えた稲葉は、すべての監督を胴上げしている。プロ野球生活20年、勝利を知る大打者は、誰よりも"全力疾走"な男であった。

2014/10/04

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プロ野球生活20年間で変わらなかった姿勢

 全力疾走。
 20年に及ぶ稲葉篤紀の現役生活を表わすのに、これ以上言葉はない。
 稲葉はいつも全力で走る。ヒットを打ったときも、凡打したときも、そしてベンチと守備位置を往復するときも。

 9月26日、QVCマリンでの最後のゲームを観に行くと、いつものように全力疾走する稲葉がいた。

 攻撃が終わると、真っ先にベンチを出る。その場で何度か足踏みをして一気に加速、膝を高く上げるフォームで球審の後ろを回り、一塁に駆けていく。そして守りが終わると、ふたたび全力でベンチに駆けてくる。多くの選手が淡々とベンチに「戻る」中で、稲葉はいつものように走っていた。

 野球ではフル出場すると、攻守交替で9回走ることになる。また打席に5度立てば三振する以外は、ヒットでも凡打でも少なくとも一塁までは走ることになる。凡打してベンチに戻るときも。

 つまり選手ひとりにつき、1試合あたり15回ほど「全力疾走できる」機会がある。稲葉はこの機会を無駄にせず、20年も黙々と走り続けてきたのだ。

 1995年、ヤクルトに入団したときの稲葉は、少し極端にいえば打つだけの選手だった。足は速くないし、肩も決して強くない。
 だが、打つだけの選手にはならなかった。
 全力疾走を繰り返すことでスピードを補い、守っても捕球後の送球動作を簡素化することで肩を補った。

 全力疾走は、ただ全力で走るということだけではない。あらゆる機会を無駄にせず欠点を補う、稲葉の精神を象徴する言葉なのだ。

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