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「専属捕手」としか結果を残せないピッチャーは一流か【里崎智也の里ズバッ! #04】

今季から野球解説者として各方面で活躍する里崎智也氏が、その経験に裏打ちされた自身の「捕手論」を語る好評連載。第4回のテーマは、特定の投手とのセットで出場機会を得る「専属捕手」の存在について。今回も独自の切り口で、賛否両論ある議論に一石を投じます。

2015/06/02

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“相性”とは関係なく結果を出すのがプロ

 もちろん、ピッチャー自身の思惑とは別のところで、首脳陣が、過去のデータなどを総合的に判断して「専属」にするというケースもあるだろうし、場合によっては、その組み合わせの妙が、ピッチャーのもつポテンシャルを引きだすことだって十分ある。

 自分の話をして恐縮だが、ずっとくすぶり続けていながら、プロ8年目だった13年のシーズンにローテを守って9勝(1敗)を挙げたマリーンズの左腕・古谷(拓哉)などは、先にも挙げたエースたちと「専属捕手」との関係と同様、僕が“専属”になることで、そのポテンシャルが花開いた成功例と言えるだろう。

 とは言え、僕自身は、もともとの才能はあるのにマウンドで考えすぎてしまうクセのあった彼に、考える暇を与えないリードをする──という、自分の仕事をしたまでのこと。そこに能力の向上を図るべく人一倍の努力をしてきた本人の日々のがんばりがうまく重なり、結果的にそうなったというだけで、こちらにも「専属捕手」になったという意識は当然ない。

 僕が現役を引退したあとも、彼には現在進行形で結果が求め続けられているように、“相性”のよさや、個人的な好き嫌いを度外視したところで、お互いが粛々と結果を出していくのがピッチャーとキャッチャーのあるべき姿。

 もしキャッチャーに信頼が置けないなら、サインに首を振って、自分の納得がいくボールを責任もって投げこめばいいし、キャッチャーも、その責任においてそのボールを全力で捕りにいけばいい。そうした積み重ねのなかで信頼関係を築いていくのが、プロのバッテリーというものだ。

 18勝(5敗)を挙げてタイトルを総ナメにした06年の斉藤和巳のように、他を圧倒するほどの成績を挙げられるのであれば、それはもう「相性がいいからだ」と言いきってしまっても、誰も文句を言いはしまい。

 だが、そこまでの境地に到達してもいない並のピッチャーが、「あのキャッチャーと組むときだけは、リズムよく(あるいは、テンポよく)投げられる」などというのは、僕からすれば100年早い。なぜなら、たいていのピッチャーは、テンポがよかろうが打たれるときは打たれるし、テンポが悪かろうが抑えられるときは抑えられるもの。

 受けるキャッチャーが誰であろうと、リズムやテンポもまた「結果論」でしかないのである。

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里崎智也(さとざき・ともや)
1976年5月20日生まれ。徳島県鳴門市。鳴門工(現・鳴門渦潮高)、帝京大学を経て、98年のドラフト会議で、千葉ロッテマリーンズを逆指名(2位)して、入団。03年に78試合ながら打率3割をマークし、レギュラー定着の足がかりをつくる。05年は橋本将との併用ながらも、日本一に貢献。06年にはWBC日本代表として世界一にも輝いた。また、大舞台にもめっぽう強く、05年プレーオフのソフトバンク戦で馬原孝浩(現・オリックス)から打った、日本シリーズ進出を決める値千金の決勝タイムリーや、故障明けのぶっつけ本番で臨んだ10年のCSファーストステージ・西武戦での、初戦9回同点タイムリー、長田秀一郎(現・DeNA)から放った2戦目9回同点弾をはじめ、持ち前の勝負強さで数々の名シーンを演出。00年代の千葉ロッテを牽引した〝歌って、踊って、打ちまくる〟エンターテイナーとして、ファンからも熱烈に支持された。

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