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「目指すは夏場の一軍昇格」香月一也、1本の特別なバットとともに再出発へ【マリーンズ浦和ファーム通信#45】

開幕前に左手の怪我に見舞われた香月一也が、予想以上に早い実戦復帰を果たした。野球を出来る幸せを噛みしめ、夏場の一軍昇格に向けて再スタートを切った。

2018/06/11

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憧れの大先輩のバットで打席へ

 そんな日々で心の支えとなったのはいつもリハビリに立ち会ってくれた理学療法士の望月一氏だった。手術の必要を医師から宣告をされた時、涙がにじんだ。
 
「正直、オレはもう終わったと思った」と本人も当時を振り返る。その気持ちを察し、心が折れないように励まし続けたのが望月氏だった。「してしまった怪我は仕方がない。あとはこれからどう過ごすかが大事になる」。そう言って様々なリハビリメニューを作ってくれた。通院もいつも付き添ってくれた。そのたびに「この怪我がキミの人生でいい方向へと向かうキッカケにすることもできる。そうなれるように頑張れ」と励まし続けてくれた。その言葉があったから一生懸命、リハビリに取り組むことが出来た。左手を使えなかったが下半身強化をしたり、地道な反復練習をこの機会にしっかりと行うべく取り組んだ。強い気持ちは骨にも伝わった。レントゲン検査の結果は医師も驚くものだった。そして復帰は8月から6月まで早まった。驚異的な回復だった。
 
 実戦復帰の日、特別にしている1本のバットを手にしていた。このバットを持って打席に入ることをモチベーションにリハビリに取り組んできた。それは大村三郎氏(登録名サブロー)が現役時代に使っていたバットだった。引退した2016年に「オマエにやるよ」と大村三郎氏が使っていたバットを沢山譲ってもらった。再出発の日、いつも気にかけてアドバイスをくれた憧れの大先輩のバットを握った。
 
「もらったものは昨年、ほとんど折れてしまっていたけどメーカーの方が大事に保管してくれていたんです。今日はこれで打つと決めていました。そしてこの特別な気持ちをこれからの野球人生で忘れないようにしたい。怪我をした日々で悔しい想いを沢山した。野球を普通に出来る幸せを痛感した。その想いを忘れずに日々を過ごしていきたい。怪我をした時期に作り上げた下半身を利用したプレーで一軍にアピールをしたいです」
 
 香月はそう言ってほほ笑んだ。高3夏の甲子園では3番打者として大阪桐蔭を優勝に導いた。そしてプロ入りし1年目は二軍でレギュラーとなり2年目から一軍の出場を徐々に増やしていった。憧れの先輩である大村三郎氏からも認められる潜在能力。初めて味わった大きな挫折がそんな逸材の心を一つ上の段階へと成長させた。目指すは夏場の一軍昇格。疲れ知らずの若者はここからさらにスイングの鋭さを増してアピールをする。

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