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広島の“生え抜き”を育て切る極意とは? スカウト陣のドラフト補強戦略を解く

長い低迷期を乗り越え、セ・リーグを連覇した広島東洋カープ。現在の躍進を支えているのは、“生え抜き”と呼ばれる選手たちだ。その選手たちを発掘したスカウト陣はどのようなドラフト補強戦略を持っているのか。『ベースボールサミット第11回 特集 広島東洋カープ』(カンゼン)から読み解く。

2017/10/26

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「え? そこまで見ているんですか?」高校監督も驚嘆

 プレーの面に関しては、俗にいう“三拍子そろっている”という言葉を「一番嫌い」と語る。走攻守がそろっていても、戦況を読めなければ意味がない。苑田スカウト部長が最も重要視する部分は「カープの野球に入ってこれるかどうか」にあるという。
 
 具体的に言えば、「自分さえ良ければチームはどうなってもいいというような、カバーリングもしないような選手はどんなに能力があっても、チームの中に入れたらうまくいかない」とした上で、「カバーリングができなければ上手くならないし、3割を打ってもチャンスで進塁打を心がけなければチームは負けてしまう」と説明する。
 
 「欲しいのはカープに合う選手ではなく、本当に野球を知っている選手」
 
 では、現在の主力選手のアマ時代、広島はどのようにスカウティングをしていたのだろうか?
 
 現在、攻守ともに柱として活躍する3番・中堅手の丸佳浩は、高校最後の年には投手としてセンバツに出場したが、苑田スカウト部長は「野手に転向したほうがすごい選手になると思っていた。投手としては全然見ていなかった」と振り返っている。その理由については、「足もあるし、肩も強いし、スイングが速かった」と語る。
 
 当時、苑田スカウト部長と千葉経大附属高校の松本吉啓監督との間で、こんなやりとりがあったという。
 
「丸、いいですね」
「いや、大したことないですよ」
「違う、違う、バッターとして」
「え? そこまで見ているんですか?」

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