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低迷期を支えた“伝説のスカウト”が語るカープの25年。逆指名制度で失った二岡智宏との邂逅  

25年ぶりにセリーグを優勝した広島東洋カープ。かつて広島に在籍した、伝説のスカウトは今回の優勝をどのように見たのか。

2016/10/03

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広島のスカウトシステムを作り出した人物

 スカウティングにおける広島流はどこからつながってきたのだろう。宮本氏が広島で選手としてプレーした時代の監督に根本陸夫がいる。のちに西武、ダイエーで強力なスカウティング網を作り上げ、球界の寝技師といった異名も持つ人物だ。

 対極には思えたが、広島のスカウティングと根本の関わりについて尋ねてみると、宮本氏は首を振りながら「いや、カープのスカウティングの基本を作ったのはオーナーです」と言った。

「選手で広島に来た時のオーナーは先々代(マツダ2代目社長、恒次氏)、選手の途中からコーチで戻った時は先代(耕平氏)、スカウト専任になって10年ほどした時からは今のオーナー(元氏)。とにかくみんな野球が大好きで詳しい。スカウト会議に欠かさずオーナーが出席するチームなんかカープ以外にないでしょう。このオーナーの考えやカラーがスカウティングにも出ている」

 出席するだけではない。どんどん意見を口にする。それも単なる思いつきでない意見を。

「今から10数年前ですけど、今のオーナーがスカウト会議の時に表を作ってもってこられたことがあった。見たら縦軸に18歳から40歳くらいまでの年齢が入っていて、横軸には投手、捕手、内野手、外野手のポジション、そこに右投げ、左打ちまで入ってる。一目でどこが足りない、近々足りなくなるというのがわかる表です。それを自分で作って持ってきて意見を言うんですから、すごいですよ」

 根っからの野球好きに加え、宮本は歴代オーナーを語る中で何度も「とにかく人を大切にする」と繰り返した。そして、これが広島カープというチームの空気にもなっているんです、とも。

「オーナーは選手、スタッフはみんな家族という意識なんです。本当に人を大事にされる。スカウトに対しても意見は言っても、結果に対して怒ったりすることはない。だからスカウトも思い切って動けるし、自信を持って目にかかった選手を推せる」

 それが菊池であり、丸であり、田中であり……現チームを支える選手の指名にもつながっていったのだろう。また、そんな球団愛を感じて育ったスカウトとプロの世界の入り口で出会った選手たちの中にもささやかなカープ愛が生まれ、やがて成長していく。宮本氏はチームに復帰した黒田や新井の大ベテランを中心に選手たちが抱合う優勝シーンをテレビで見ながら、「やっぱりカープはいい球団や…」と改めて思ったという。手間暇かけて作り上げてきた過程の中から今年の強さは生まれてきたのだろう。

 さて、ここから戦いはクライマックスシリーズから日本シリーズへとつながっていく。宮本氏は古巣の更なる活躍を期待しつつ、一方では元スカウトとしての心情も口にした。

「今年、鈴木誠也がこれだけの活躍をしたんですけど、見てると高橋が気になってね。振れるバッターで間違いなくいいものは持ってるんだから、きっかけひとつのはずなんです。チームとしては若い選手が多くてまだまだ強くなりそうだけど、そこに来年から高橋も入ってきてほしいですよ」

 高橋とは宮本が関わった最後のドラフトで1位指名を受け龍谷大平安から入団した高橋大樹のことだ。2位入団の鈴木とは同期であり、本人の心情も思いやっての親心が伝わってきた。

 チームを離れてもなお心は広島に心を残しながら、元スカウトとカープの熱い秋は続いていく。

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