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下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル#3 2時間に1本しかこない通学電車

2018年夏の甲子園に初出場した三重県立白山高校。10年連続県大会初戦敗退の弱小校。「リアル・ルーキーズ」のキャッチフレーズ……。そんな白山高校がなぜ甲子園に出場できたのか。 3/7発売「菊地選手」渾身の一作「下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル」から第一章を公開する。

2019/03/04

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菊地高弘

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2時間に1本しかこない通学電車

 JR松阪駅のホームに停車した、一両編成の列車がある。松阪駅から伊勢奥津駅を結ぶローカル線・名松線である。1929年開業の歴史のある路線だが、ホームに掲示された時刻表を見ると1時間置きに空白がある。7時32分発の始発から21時27分発の終電まで1日8往復、2時間に1本しか走らない列車なのだ。
 
 もともとは松阪と名張の間を運行する予定で、頭文字を取って「名松線」と命名されたはずだった。だが、別の鉄道会社が名張方面の路線を開通させたこともあり、名松線は伊勢奥津までの運行に留まっている。その後、大型台風の被害を受けるたびに廃線の話が湧いては消え、湧いては消え、現在に至っている。
 
 松阪駅を出てしばらくは郊外を走るが、5駅目となる井関駅を越えたあたりから景色が変わってくる。進行方向の右側にくねくねとうねるように流れる雲出川が現れ、車窓には畑が広がり、小高い山々が連なる。右に見えていた雲出川は気づけば左側に移り、また小さい橋を渡れば右に移る。まるで雲出川と名松線のランデブーのように絡み合った道のりを進むと、松阪から9駅目となる家城駅に到着する。
 
 この家城駅で下車し、徒歩10分ほどの場所に白山高校はある。
 
 白山に通う生徒の7~8割は名松線を利用している。名松線沿線の高校は白山しかないため、始発の乗客はほとんど白山高生で占められる。ある生徒は「白山専用車両みたいです」と笑う。
 
 中年女性の白山町民は、こんなエピソードを語っていた。
 
「朝は白山の生徒さんばかりで、なかには制服をだらしなく着た不良っぽい子が車内の床にベタッと座っているんです。ただでさえ狭い車内ですから、困るのは困るんですけど……。でも、私が通りにくそうにしていたら、近くで床に座っていた別の生徒さんが『おい、どいてやれや』って言ってどかしてくれたんです。怖そうに見せて、本当はかわいい子たちなんですよ」
 
 証言してくれた女性は好意的な見方をしているが、そんな寛大な地元住民ばかりではない。「しょうがないやつらだ」と眉をひそめる者もいたに違いない。その証拠に、高校にかかってくる苦情電話も多かった。

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