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下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル#1 たったひとりの野球部員

2018年夏の甲子園に初出場した三重県立白山高校。10年連続県大会初戦敗退の弱小校。「リアル・ルーキーズ」のキャッチフレーズ……。そんな白山高校がなぜ甲子園に出場できたのか。 3/7発売「菊地選手」渾身の一作「下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル」から第一章を公開する。

2019/02/28

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菊地高弘

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たったひとりの野球部員

 周囲の視線が背中に突き刺さった。
 
――あいつ、大丈夫か?
 
――試合もできやんのに、何しとんの?
 
 そう言われているような気がした。
 
 校内のクラブに入っている生徒は全校生徒の1割程度ではあるけれど、放課後になれば少ないながらも校庭で活動する運動部員がいる。しかし、グラウンドに出て練習用ユニホームを着ている野球部員は自分ひとりだけだった。
 
 たったひとりの野球部員、青木隆真は恥ずかしさを覚えながらも、ひとりで準備体操をして、ひとりで練習の準備を始める。といっても、できることなど限られている。防球ネットを立て、適度に離れた位置にボールケースを運び、ネットに向かってボールをひたすら投げ込む。ケースが空になればネットまでボールを拾いにいき、ネットスローを再開する。その繰り返しだった。ひとりでできることと言えば、あとは走ることと、バットを持って素振りをするくらいである。
 
「きついな……」
 
 そうつぶやいてみても、反応する者は誰もいない。隆真が「きつい」と感じたのは、もちろん練習の強度の問題ではない。周囲の憐あわれみの視線に耐えながら、孤独な練習を続けることへの絶望感だった。

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