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問われる伝える側の姿勢。その見出しがドラフト候補をつぶす

ドラフトの時期に差し掛かると、その選手の評価を「○○二世」と表現するメディアが多い。しかし、その表現自体が当の本人を苦しめかねない。

2016/04/25

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Getty Images

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「○○二世」の表現に潜む危険値

 4月から6月にかけての約3カ月はプロのスカウトたちが多忙を極める時期である。一般的には高校野球における夏の甲子園や予選時の活動が目立つが、実際には夏はスカウトにとっての最終確認の場である。200人から300人とも言われる一次候補の選手を絞り込んでいくのが夏へ向かうこの時期なのだ。

 高校野球なら春の各県大会から地区大会、大学生ならリーグ戦から大学選手権、社会人では都市対抗予選らを追いながら、練習グラウンドを訪ね歩く。消しの作業がまさに今、行われている。

 スカウトたちが忙しく歩き回る一方、例年、この時期には各地から「怪物」や「○○二世」が現れてくる。先日、あるスポーツ新聞のサイトを眺めていると「ゴジラ二世」の見出しを見つけた。クリックしたところ専修大学の森山恵佑の活躍を伝える記事だった。森山は星稜高校の出身で本家に劣らぬ1メートル89、92キロの堂々たる体格からの長打力が持ち味の選手だ。そこで「ゴジラ二世」となったようだ。

 記事を読みながら3月末、智弁学園の優勝で幕を閉じた選抜大会を思い出していた。そこにも「二世」と呼ばれる好投手がいた。創志学園(岡山)の高田萌だ。高田は2年生だった昨夏の県大会で決勝まで勝ち上がり通算37回2/3を投げ4失点。140キロ台のストレートと縦横のスライダー、さらには本人が憧れ、動画で研究したという本家似のフォームから「松坂二世」と呼ばれるようになった。選抜出場が確実になると高校野球雑誌やスポーツ新聞に掲載の高田の記事にはほぼ「松坂二世」の4文字が入っていた。
 評判を聞き観戦に出向いた秋の岡山大会では調子を落とし、完投した試合の最速も141キロ。モーションの雰囲気以外に「松坂二世」の評判に重なるものは見当たらなかった。しかし、冬を越して臨んだ選抜では2試合を投げ試合後半に140キロ台後半のストレートを続け(最速149キロ)、ブレーキの鋭いスライダーも披露。スカウトからは「大会ナンバーワン」の声も聞こえた。ただ、確かに大会屈指の好投手であり、夏への期待を込めればさらに楽しみの増す素材と認めた上で、“松坂二世”の呼び名には最後まで頷けなかった。比較対象は何と言っても“あの”松坂なのだ。

「○○の松坂」と「松坂二世」では重みが違う。大阪桐蔭時代の藤浪晋太郎も2年当時は時折「ナニワのダルビッシュ」と呼ばれていた。当時、各地に高身長でスピードがある右腕、あるいはハーフといった要素から「○○のダルビッシュ」と呼ばれる投手が揃い、特集を組む雑誌もあった。そこにさしたる違和感は覚えなかったが、「二世」となると、本家と極めて近い実力に加え、本家の持つスケールや雰囲気まで備えていないといけないはず。そこでどうにも引っかかってしまうのだ。

「ゴジラ二世」に「松坂二世」。本家の凄さをリアルタイムで感じていた者なら使用には相当な覚悟と確信が必要だと思うが、松井や松坂の“当時”を知らない若い書き手が増えたことも1つだろう。加えて「○○二世」や「怪物」といったフレーズの多用にはやはりネット時代を思う。

「まず、クリックしてもらうような見出しをつけないとダメなんです」
「とにかく開いてもらわないと…」

 何度かこういったネット記事を書く中でサイトを扱う編集者から聞いた言葉だ。程度の差こそあれ、アクセス数により広告収入が変わる、ネット運営に関わる多くの者の本音だろう。もちろん、雑誌や新聞でも「目を引くための見出し」はいつの時代も求められてきたが、ネット時代の中でその傾向がより顕著になった。同時に読者は常に新しい、インパクトのある情報を求め、その中で言葉はどんどん軽くなり、「怪物」や「○○二世」も生まれやすくなっていった。

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