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強打健在、センバツ4強の秀岳館(熊本)。異色の指揮官『初球打率論』進化させ、夏の頂点狙う【2016年夏 注目校ルポ】

中学ボーイズリーグの名門「枚方ボーイズ」で指揮を執り、甲子園のNHK解説でも知られる鍛治舎巧氏が秀学館の監督になったのは2014年のことだ。この春のセンバツでは、ベスト4に進出。強打の打撃で一世を風靡した。夏に向けて、狙うは初の頂点だ。

2016/07/09

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スイングスピードのベースを上げる取り組み

 ところが、目標としたセンバツ優勝を逃したことで、この打撃理論も結局は完成には至っていなかったと鍛治舍監督は言う。そのうえ、ライバルたちも春より数段レベルを上げてくるであろう夏に、優勝旗を手にしようと思えば、より打撃の精度を上げねばならない。

 夏の好投手を打ち崩すために必要なものとは何か。鍛治舍監督が考えたのは、原点に立ち戻ることだった。春以降、打撃を総合的にスキルアップするべく取り組み始めたのはスイング。つまり、素振りである。

「素振りはコースも球種も自分で想定し、タイミングもイメージして振れるのでスイングスピードが一番速い。このフルスイング時を10割だとすれば、打撃練習ではスイングスピードが8割に落ちます。試合になればさらに1割落ちて、2ストライクに追い込まれるともう1割落ちる。6割まで落ちるスピードを補うためには、ベースとなるスイングスピードを上げればいい。スイングスピードが2割アップすれば、フリー打撃でも素振りと同じスピードで打つことができるのです」

秀岳館2

 この理論で言えば、もはや“お家芸”ともなった追い込まれてからでも、フリー打撃と同じスピードが確保できることになる。センバツ後から秀岳館ナインはメンバー全員が揃っての素振りを欠かしていない。全員が呼吸を合わせ同時に振り出し、インパクトの音をピタリと合わせる。各人の調子の良し悪しやスイングの状態を知る上でも効率がよく、その音を判別しやすいようにこの練習を室内で行っている。

 もちろん秀岳館独自のポイント制ロングティ(80m=1点、90m=3点、100m=5点の合算で100スイング行い、スイングスピードの向上を確認する)も継続的に取り組んでいるが、春の段階でケタ違いだった打力をさらに昇華させるために鍛治舍監督が見出した練習法こそが、打撃練習の原点ともいうべき素振りなのである。

 2014年以降、新たな機軸を打ち出し続ける秀岳館。
 鍛治舍監督が辿り着いた「窮すれば原点へ」は、今後の高校野球界におけるスタンダードとして定着していくのかもしれない。

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