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台湾の最新野球事情――知名度が高い大谷、中田。陽・チェン・郭らの活躍で日本野球は人気

現在、台湾で日本の野球はどのように見られているのだろうか。台湾国際放送(RTI)の日本人記者に聞いた。

2015/11/17

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まだ発展が期待される、台湾野球

――NPBとCPBL(台湾プロ野球)は、どういう部分が違うのでしょう。また台湾の野球ファンはどこに違いがあるとみているのでしょうか。
 
 日本スタイルの守りを中心とした緻密な野球が好きという人も多いですが、台湾の野球ファンを全体的に見ると、力と力の対決、投手戦よりも打撃戦を好む傾向はあります。
 
 CPBLは今年、林智勝選手(ラミゴモンキーズ)が台湾プロ野球初の「トリプルスリー」、高国輝選手(義大ライノス)が39本塁打で、台湾プロ野球ホームラン新記録を達成するなど、「打高投低」の年でした。優勝したラミゴモンキーズは、点を取られても打ち勝つ野球で頂点に立ちました。
 
 今回のプレミア12は、米マイナー勢のプロスペクトの投手の招集が難航し、投手力が不安視されるなか、ディフェンスよりも打撃面優先でチームを組みました。今大会の結果については色々な評価はあるでしょうが、CPBLの主力打者の打力、乗った時の勢いなど、台湾野球の魅力は感じさせてくれるチームでした。その一方で脆さも露呈しました。色々な意味で、台湾野球らしさを感じるチームだったように思います。
 
 プレー以外の面で、CPBLの大きな魅力は選手とファンの距離の近さ。これは台湾人全般にもいえますが、選手の親切さ、人懐っこさに驚き、いい意味でのカルチャーショックを受け、台湾プロ野球にハマっていく外国人は少なくないと思います。これは大きな魅力です。
 
――今回のプレミア12は、新聞などの報道を見ても、盛り上がっているように思いましたが、実際のところ、どうだったのでしょう。
 
 地元開催ということもあり、非常に盛り上がりました。
 
 台湾は、国際社会の中で置かれた立場や、戦後の野球発展の歴史の経緯もあり、プロ野球よりも、国際大会が盛りあがる傾向があります。
 
 とはいえ、チケットが、台湾プロ野球のレギュラーシーズンのチケットの3倍から5倍という値段であったにも関わらず、オランダ戦、キューバ戦、プエルトリコ戦では、2万人の収容人数の8割から9割近く埋まりました。台湾の代表チームの試合では、家族でテレビ観戦している人も多かったようです。
 
 課題は台湾以外の試合でしょうか。前に振れた通り、日本の試合はまずまずの盛り上がりをみせましたが、その他のカードではいずれも数百人だったようです。
 
 中には、こうしたチームへ声援を送り、選手と交流をする台湾のファンもいましたが、今後もこうした国際大会のホスト国になるにあたっては、野球そのものを楽しむファンがもっと増えるとさらにいいと思います。
 
――今後、台湾の野球はどうなっていくでしょう?
 
 野球人気は2013年から息を吹き返し、ブームの中にあります。
 過去には八百長問題などが何度もあり、さらに北京五輪と2009年のWBCで中国に連敗するなど、どん底に落ちた時期もありましたが、2013年が転機となりました。
 
 2013年3月のWBCでは、予選グループを突破、日本、キューバには敗れたものの国民を感動させました。そしてCPBLではこの年からCPBLに参入した義大ライノスが、MLBの大物、マニー・ラミレスを獲得し、野球ブームとなりました。
 
 このほか、ラミゴモンキーズが、本拠地、桃園国際球場の施設面の改善、アンプを取り入れた応援、チアガールの増員、ホームスタジアム内野の完全ホーム化など応援の改革を行い、これが新たなファン獲得に成功につながると共に、他の球団へも影響を与えています。平均観客動員数は2013年に、前年比で約150%アップの6079人、昨年2014年は5103人、今年は約9%増で5531人となりました。ラミゴと中信兄弟の間で行われた台湾シリーズでも、両チームのチケット収入の合計は、初めて台湾元1億元(日本円約3億7500万円)を突破しました。
 
 現在は4チームと少なく、プロ入りをためらっているアマチュアの有力選手もいるため、新チームの参入が待たれます。台湾プロ野球の魅力を維持しながら、改善すべき点は改善し、リーグのレベルアップを図るとともに、2017年のWBCでの好成績を目指してほしいと思います。
 
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 旅や友人との出会いから、台湾人の温かさ、台湾野球に魅せられ来台してはや10年、今後もRTIの一員として、台湾の魅力を様々な角度から発信していきます。台湾のスポーツを紹介する番組「スポーツオンライン」では野球も取り上げていますので、ご興味のある方は番組をご聴取ください。短波ラジオのほか、インターネットでの聴取も可能です。http://japanese.rti.org.tw/
 
 私は一人のウオッチャーとして、今後も台湾野球の魅力を伝えていきたいと思っています。豪快な投打の対決、熱い応援、選手とファンが一体になった盛り上がりなど、魅力たっぷりですので、皆さん、ぜひ、台湾に野球を見に来てください!

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