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侍Jが世論を覆し決勝R進出を決めた要因。小久保監督が貫き続けた選手への信頼

第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に出場している侍ジャパンが4大会連続の決勝ラウンド進出を決めた。大会前までは過去最低の予選ラウンド敗退の予想があったなか、全勝突破の要因を振り返る。

2017/03/21

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監督が待ち焦がれた“中田の復調”

 一方で、小久保監督が頑なに譲らなかったのが「4番・筒香」「5番・中田」だ。
 
 筒香に関しては「どっしりとしている」と4番に起用することを早々に明言したが、小久保監督は筒香が結果を残すか否かよりも、「4番然」とした立ち振る舞いに全幅の信頼を寄せた。
 
 そして、予選ラウンドに大きな影響を及ぼしたのが「5番中田」だ。
 4番打者の存在が大きくなればなるほど、5番打者にかかる比重が大きくなることは野球では当たり前のことだ。小久保監督は、そこに中田を据え続けたが、これも、彼の状態が上がるのを待ち続けた。ハマったら怖い打者であることを念頭に入れ、「筒香のうしろ」を中田に預けたのである。
 
 その中田は、第1次ラウンドの2戦目・オーストラリア戦で貴重な勝ち越しの本塁打を放った。この1本は中田らしく、相手の特徴を読み切った豪快弾だが、中田自身にとってだけではなく、チームにとっても非常に意義のある一発だった。
 
 なぜなら、筒香を歩かせてもいいと頭で理解していても、後ろに中田というスラッガーがいることを思うと、割り切りができなくなるからだ。相手投手に筒香の後ろにいる打者のことをちらつかせることになる意義のある一発だった。
 
 中国戦でもアーチを架けた中田はそのまま好調をキープ、重要な第2ラウンドのオランダ戦では、バンデンハークにダメージを与える3点本塁打を放ち、タイブレークにもつれた延長11回表には、貴重な勝ち越し打を放った。
 
 オランダ戦の筒香が完全にマークされて無安打。中田の復調を待ち続けた指揮官の勝利だったといえるだろう。
 
 投手の継投においては、権藤コーチとのやり取りにやや微妙な関係性を感じるが、こと打撃面に関しては選手の状態を見極める能力に長け、「頑固さ」と「柔軟性」を上手く使い分けた。その結果が、指揮官も「予想していなかった」と目を丸くした日本ラウンドでの得点力に繋がったに他ならない。
 
 当然、決勝ラウンドへ行くと、状況は変わる。
 対戦国の投手はいままで以上に手強くなるし、球場が広くなり、ホームランが減るということも頭に入れなければならない。準決勝の相手が開催地の米国と決まり、環境も厳しくなる。
 
 その中で、小久保監督がどんな手腕を発揮するのか。
 かつては頭でっかちなイメージでしかなかったが、「頑固さ」と「柔軟性」を使い分け、起用したからには信頼するという姿勢を持つ指揮官ならという期待感がある。
 
 小久保監督の次なる手はいかなるものなのか――。
 大一番の準決勝を控え、楽しみでならない。

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