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“ユダヤ野球”が伝統国を駆逐する――。進撃のイスラエルと発展しない台湾の悲哀

第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で韓国、台湾を下し、2次R進出を確実のものとしたイスラエル。隠れた実力者は多かったものの、チーム練習であまりできない中で、高い組織力を発揮したことは特筆すべきことだ。ソウルでの試合を追っていた台湾人記者は、快進撃のイスラエルと自国の体たらくを比較し、複雑な感情を抱いている。

2017/03/08

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“血縁組”には批判も。発展しない台湾野球の暗澹たる未来

 今回のイスラエル代表は、純粋にイスラエル出身の選手と言えるのはわずか1人だけだ。他の選手は米国出身で、つまりイスラエル系米国人であり、小さい頃から米国野球の薫陶を受けた選手たち。
 
 WBCの参加資格により、祖父の代に当該国の国籍があり、または当該国に生まれれば、その選手が大会に出場することが可能となっている。分かりやすい例では、2006年のアレックス・ロドリゲスは、出生国ドミニカ共和国の国籍を捨て、米国のユニホームを着ることを決断した。
 
 台湾対イスラエルの試合後、キャプテンの林智勝(リン・ジセン)は「イスラエルはアメリカの2軍。正直なところ、負けても『米国に負けた』という気持ちだ」と率直な気持ちを語った。
 
 国内外でこのレギュレーションには批判が出ている。「国籍法により、将来はイタリア系米国軍団なども出て、強豪に勝ってもおかしくない」「血縁が生かせるなら、その国は真剣に野球を発展する必要ないだろう?」などだ。
 
 サッカーやラグビーの場合、“帰化選手”を探し、代表チームを強化する方針が存在した(現在でもある)。同様に現在の野球界でも、野球新興国が“血縁選手”を利用し、勝利を収めるケースがついに出始めた。
 
 それはそれとして、台湾は野球の発展方針を考えなければならない。10年前、台湾人はまさか台湾野球が中国代表に負ける日を迎えるとは思っていなかった。そして今、台湾野球がイスラエル代表に負けた結果を見て、この国は一体どこが進歩しているというのか? はたまた、退化中とでも言うべきだろうか? さらに10年後、また他の“野球新興国”に屈してしまうのか?
 
 もちろん未来は未知だが、今の台湾野球の現状を見て、その結果を台湾人は既に知っているかもしれない。

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