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体の小さい日本人野手も、MLBでパワーヒッターになれる? アメリカで常識的な「ショート・コンパクト・スイング」の教え【元ドジャーススカウト、小島圭市の禅根夢標】

読売ジャイアンツなどでプレーし、その後ロサンゼルス・ドジャースの日本担当スカウトとして当時、黒田博樹投手や齋藤隆投手の入団に携わった小島圭市氏の連載。小島氏は現在、スポーツ環境の向上から青少年の育成に積極的に関わっています。今回のテーマは「パワーヒッター」について。MLBの日本人野手でホームラン数が少ないのは、体の大きさがすべての原因なのでしょうか?

2015/03/31

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 第3回のコラムでは、日本人内野手の可能性について取り上げましたが、今回は、打者、特に、MLBでは日本人選手の成功例が少ないと言えるパワーヒッターを議題にします。過去、MLBで日本人選手が30本塁打を打ったのは2004年の松井秀喜選手の1回でした。中田翔選手や筒香嘉智選手、T-岡田選手など、若手を中心に日本人のパワーヒッターが台頭してきていますが、日本人パワーヒッターの行く末は明るいのでしょうか?

「ショート・コンパクト・スイング」できる選手はホームランが増える

 今回は「パワーヒッター」がテーマですが、一言に「パワーヒッター」といっても捉え方によって大きく違ってきます。
 例えば、「パワーヒッターとは?」と問いかけをして10項目を並べたときに、個々で感じているパワーヒッターの概念は異なっているのではないでしょうか?飛距離を飛ばすことがパワーなのか、ホームランの数が多いことがパワーヒッターなのかなど、何をもって判断するのかは、個々によって異なるということを頭に入れておいたほうがいいのかもしれません。
  
 私は、パワーヒッターについての捉え方が日本とアメリカでは異なっているように感じています。外見から、力のあるアスリートがバットを持って、簡単には打てるとは限りません。しかし、メジャーリーグには体が小さくても20~30の本塁打を打てる選手がいるのです。
  
 つまり、力の出し方や出力の仕方に違いがあり、アメリカのバッターたちは(パワーヒッターであるかどうかに関わらず)は、力の出力に特徴があって、インパクトの瞬間に力を伝えるスイングを心がけています。インパクトの瞬間に力を集中させることで、ホームランを打つことができているのです。アメリカは「ショート・コンパクト・スイング」(以下SCS)という表現をよく使うのですが、日本でも人気のロビンソン・カノ選手(マリナーズ)はまさにそんなバッティングをしています。彼の体は大きいですが、力任せのようなバッティングをしているのではなく、技術がしっかり伴っていて、SCSでしっかりと打てる選手であるのです。
  
 日米の選手で比較して分かりやすい特長としては、体の軸(体軸)の動きにあると思います。アメリカの選手のほとんどが、バッティングに際して、動きながら打つということはあまりありません。その場で体を回転させる打ち方をしています。一方、日本の選手は体の反動を使って打つ選手が多いように感じます。
  
 これは育成の段階での違いもあるように思います。ジュニア世代の子どもたちが反動で打ってしまうのは仕方がないですが、一部ではボールを遠くに飛ばすために、勢いをつけて、足を上げて打つほうが良いという指導が日本にはあり、その影響ではないでしょうか。
  
 アメリカでは、これがバッティングの原点というかのように体軸が動きません。アメリカの選手たちが体を動かすことなく打っていますから、同じように子どもたちも体を動かさないで打つということが浸透しています。見よう見まねということでしょう。 

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