大谷翔平選手をはじめとした日本人メジャーリーガーを中心にメジャーリーグ・日本プロ野球はもちろん、社会人・大学・高校野球まで幅広いカテゴリーの情報を、多角的な視点で発信する野球専門メディアです。世界的に注目されている情報を数多く発信しています。ベースボールチャンネル



王柏融の面目躍如。「大王」の復調を証明した山本由伸からの一撃【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#147】

鳴り物入りで入団した台湾のスーパースターは、今シーズン開幕前から調子を崩し、スランプに陥っていた。しかし不調を脱し、ようやく本来の王柏融の打撃を取り戻してきた。

2021/05/16

text By

photo

Getty Images



5番、期待できるバッターへ

 僕は今季、沖縄キャンプ行を自粛したから、王の調子を見たのは鎌ケ谷だった。教育リーグとイースタン。他の外国人選手と違って、台湾から王は早々と入国を果たしていた。開幕の時点で戦列にいた貴重な外国人選手だ。だから本来は(スタメンが軒並み打撃不振の)一軍でバリバリやってほしかったのだが、そうはならなかった。王自身が調子を崩していたのだ。
 
 鎌ケ谷のスタンドで見ていて、正直、打てそうな気がさっぱりしなかった。「台湾の4割打者」「台湾初の三冠王」として鳴り物入りで入団した頃とくらべてすっかり小さくなってしまった。体格は日本人選手と変わらないから、何か非力な二軍選手なのだ。これがあの「大王」か。わざわざ桃園国際棒球場まで僕が見に行ったスーパースターかとショックだった。
 
 「バッティングが小さくなった」は具体的にはどういうことだったろう? 日本の投手(の投じる変化球)に合わせて、呼び込んで捉える意識が強かったのではないかと思う。確実性を増そうというアプローチだ。僕が見た春先の王は逆にタイミングが取れてなかった。ポイントが近すぎたのだろうか。あのスッと抜けるような王のバットの出方が見られない。こりゃ難しいところに入ってしまったかなぁと心配になった。明らかにスランプ。一軍の戦力になるにはしばらく時間がかかる…。
 
 王は二軍暮らしが続いた。清宮とクリンアップを組んだりして、鎌ケ谷は豪華だなぁとファンの間で話題にのぼる。だけど、(清宮もそうだが)王の居るべき場所は二軍ではない。復調が待たれたのだ。
 
 そしてようやく一軍に上がってきた日、王柏融は本来のバッティングを取り戻していた。ストレートの待ちでしっかり振り切る。他は待たない。ストレート待ちで変化球にも対応する。初球からガツンと叩けるように待つ。あぁ、難しいところは脱したのだとホッとした。「台湾の4割打者」が帰ってきた。不振をかこつファイターズ打線のなかにあって、王は期待できるバッターになった。
 
 打順は中田の後の5番。ここは(たぶん栗山監督の考えとしては)清宮にハマッてほしい場所だろう。左の強打者がほしかった。清宮と王では大砲と中距離砲の違いがあるけれど、この際それはいい。ま、面白いのは中田四球で2死一塁みたいなシチュエーションで、王が1塁ライン際や左中間に長打を放って、中田が必死に走らされる(!)感じかなぁ。
 
 話を戻す。12日の山本由伸vs王柏融。国際試合なら侍ジャパンvs台湾代表のマッチアップだ。王は前述したとおり、剛球に照準を合わせる。が、それを察したのかバッテリーは変化球攻めだ。ファウルでカウントを整える。王はブレない。待ちを変えない。
 
 (結果球は)球場で見たときはストレートに見えたんだけど、録画で確認したらカットボールだった。但し、剛球カットだ。まっすぐ待ちの王のバットがスッと出る。ちょうど手が伸びるところで捉えた。これが弾丸ライナーのソロホームラン(今季1号)になる。まさに王柏融の面目躍如。「大王」の復調は心強い。近藤健介と王柏融、2人の中距離砲がファイターズの軸だ。ぜひ注目していただきたい。

1 2